靜

4月の涙の靜のネタバレレビュー・内容・結末

4月の涙(2009年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

1918年内戦下のフィンランドが舞台。フィンランドっていうと「ほっこりおしゃれスローライフ」の代名詞のような平和な国のイメージがあったけど、そんなところでも戦争なしでは得られなかった場所なのね。
ちょっと下調べてから見ないと分かりづらい。ロシア語やフィンランド語の区別がままならないので、物語に散らばる濃縮されたヒントを拾えないのが悔しいところ。言語の区別ていうのは、アイデンティティが垣間見れるから。

赤衛軍の女兵士たちが白衛軍側の捕虜になり、輪姦されてから、一旦解放されるのだけど、解放と見せかけて「逃亡だ!」と言われ射殺される。
腰を振っている男たちの顔のアップに、男の肩越しに泣く女。気持ち悪い。
この男たちも家に帰れば、妻や恋人を優しく扱っているのかもしれないと思ったら余計に。敵は人間以下の蛮人。そうゆう感覚でなければ、生き伸びれないのね。白衛軍の准士官アーロは、その感覚に対して
「これは戦争ではない」と言っていた。彼だけが均衡を保っていて、生き残りのミーナを見つけると「公正な裁判にかけるべき」と、教養人という判事エーミルの元へと連行していく。

途中で船が転覆して孤島に流れ着いて小屋で一緒に過ごす内に愛情が生まれて、という一連のお約束から、いざエーミルのところへ行く後半は雰囲気が少し変わる。
教養人であったエーミルが均衡を失っていて、機械的に捕虜を処刑していく独裁者じみた人物になっていたから。でも、夜になると別の顔(というか元の顔)になる。タキシード姿で、食事に酒に音楽にと嗜むのだ。
この人の持っているある秘密と、戦場における孤独(自分と同レベルで会話が出来る、教養の高い人がいない)が、アーロとミーナの行く末にじんわり関わっていく不穏さがよかった。エーミルも、憎めない。

ミーナは、命が助かるかもしれないチャンスがいくつかあったのに自分の信念は曲げずに、正当ではない裁判に正当に挑んでいた。
生きることを諦めたのではなくて、信念を通すことを諦めない生き方ね。

悲しい話ですけど、アーロの着ていた軍服が格好よかったし、ミーナのシャツや下着もネストローブなんかに売ってそうな感じでかわいかった。
靜