半兵衛

少佐と少女の半兵衛のレビュー・感想・評価

少佐と少女(1942年製作の映画)
3.7
「汽車代をごまかすために年齢を詐称して電車に乗る」というありえないシチュエーションをコメディとして見事に成立させる、これがハリウッドデビューとは信じられないワイルダーの充実した演出力に舌を巻く。

正直30歳だったロジャースを12歳の少女に変装させるのは無理があるのだが、モノクロ効果とロジャースの少女っぽい動作や声でカヴァーしているのでコメディな世界観に浸透している。ただ登場人物のほとんどがロジャースを少女と信じて、少年たちまでもが彼女に好意を抱き、熱烈なラブコールを送るってアニメでもありえない展開だよな。

そしてダンスが得意なロジャースのために、ワンシーン踊るサービス場面を入れる粋っぷり。

ちなみに第二次世界大戦最中に作られただけあって主人公の相手役を務めるレイ・ミランドが軍人役だったり、ミランドが前線への配置を希望したり、舞台の大半を軍学校にするなど戦争色がかなり強め。にも関わらず軍人たちがロジャースを少女と信じて可愛がり、少年兵は彼女を口説こうとしたりと賑やかな演出の中に皮肉混じりの乾いた演出を感じさせるワイルダーのブラックユーモアというかシニカルさに時折ドキッとさせられる。彼の半生を知るとますますそう思う。
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