ネッコ

マルコムXのネッコのレビュー・感想・評価

マルコムX(1992年製作の映画)
5.0
アメリカ史における黒人公民権運動で名前が挙がるキング牧師とマルコムX。

穏健派のキング牧師に対し、
過激派のマルコムX

晩年は各々の姿勢が逆転していったということでも有名な二人。

この映画はそんなマルコムXの自伝を映画化したものです。
原作も長いですが読み物としてとても面白いのでおすすめです。

マルコムXはアフリカ系アメリカ人の血を引く生まれで本名はマルコムリトルと言います。

アフリカ系アメリカ人というのは定義が広いのですが、たいていは植民地時代にアフリカ大陸から奴隷として連れてこられた黒人たち、その子孫を指すようです。

マルコムがリトルの姓を捨て未知数を表すXを名乗るのには、ここら辺が関係しています。

というのも奴隷として連れてこられた黒人たちは名前を捨てさせられ、主人である白人の姓を与えられていました。

マルコムの場合は、元はマルコム〜〜という別の名字だったけれど、奴隷になった際にリトルさんという白人の家のマルコムさんとして名乗りなさいと強要されたといった具合です。

要は奴隷の血を引くアフリカ系アメリカ人の名字は、白人の家系のものであって本来の名字は子孫にとってわからない未知数のものである。

だからマルコムXなのです。
先祖が名乗っていた本当の名字を知らないから。

同じような人物にボクサーのモハメドアリがいます。彼はマルコムXが一時期所属していたネイションオブイスラムという団体に属しており、同じように改名に踏み切りました。

奴隷名についてはルーツという海外ドラマがわかりやすいんじゃないでしょうか???

そんな彼の人生を描いた作品ですが、自堕落な生活を続け、犯罪に手を染め、ついには刑務所に入れられてしまいます。

そこで彼が出会ったのがイスラム教でした。
イスラム教の教えに救われたマルコムは読み書きを勉強し、黒人たちのために活動するようになります。

ネイションオブイスラムというイスラム教の団体に所属していた彼ですが、その団体の代表の裏の顔を知るなどして、幻滅し、徐々に個人としての活動が目立ち始めます。

ここら辺からがよく言われているキング牧師との対比の時期で晩年になるにつれ、態度が軟化していきます。

イスラム教は宗派にもよりますが、キリスト教などと比べると教義に大らかな部分が多く、その点が彼の人格に影響していったのかなぁと思います。

彼は人生の早い段階から貧困やKKK(クークラックスクラン 白人至上主義団体)による弾圧、ハーレム時代の裏社会での体験など、世の中の暗い部分を知らされます。

彼の主張や言葉などに力強いものが多いのは世の中のきれいな部分だけでなく、裏側も理解した上での発言だからなのかなと思います。

黒は美しい

など印象に残る言葉をたくさん残しています。

アメリカ史
黒人公民権運動
キリスト教やイスラム教などの宗教感
当時の黒人たちの文化などなど

一人の人間の人生を描いた作品なだけあって、要素もごった煮みたいになっていますし、長い映画なので人を選びますがとても面白い映画です。

歴史の授業みたいだけど、勉強させられている感はまったくなくて面白い物語を見ている気分です。

勉強嫌いな私が言うのだから間違いなし!
ネッコ

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