みかんぼうや

マルコムXのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

マルコムX(1992年製作の映画)
3.7
タイトルの通り、アメリカの黒人解放運動家マルコムXの半生を描いた作品。「ドゥ・ザ・ライト・シング」でブルックリンの黒人たちによる白人社会への怒りと反抗を描いたスパイク・リーが、アメリカ全体の黒人解放運動の急先鋒となったマルコムXを描くことで、黒人監督として、映画という媒体を通して黒人差別や偏見に対する徹底的な闘いに挑む彼の作品のスタンスを決定づけた作品という印象を持っていました。

しかし、200分以上の大作であることと、実はマルコムXのことをその名前と黒人解放運動の中心にいた人物、そしてその末路くらいしか知らなかった自分にとっては、なかなか手が出なかった作品でもあります。

ですが、先日観た「ドゥ・ザ・ライト・シング」の内容や映画全体のノリがかなり好きだったこともありようやく鑑賞。とても面白かったです。

3時間越えの作品には相変わらず長さこそ感じましたし、前半1時間のマルコムXがまだ悪童だった時代の話はもうちょっと巻きでも良かった気はしますが(とはいえ、マルコムXが若い頃は悪行を繰り返していたことすら知らなかったので勉強にはなりました)、やはり刑務所に収監され、イスラム教と尊師を盲信し始めるあたりから、映画として加速度的に面白くなっていきました。

先に書いたとおり、マルコムX自体のことを詳しく知らなかったため、その時代の彼の動き自体が勉強になりましたし、なんと言っても主演のデンゼル・ワシントンの演技が素晴らしい!本物のマルコムXの演説映像なのでは?と思うほど、風貌、雰囲気、言葉の力強さなどが酷似しており、まさにマルコムX本人が憑依しているかのような演技。本作では、演説シーンが何度も登場しますが、その1つ1つが見どころだったと思います。

一方、「ドゥ・ザ・ライト・シング」で大好きだったストリート感溢れるお洒落なノリと演出は控えめで(内容的に当たり前ですが)、有名人物の半生を描く作品としては思った以上にオーソドックスな作りだったように思います。

ですが、アメリカの近代史を知る上での重要な人物の生き様を学べ、デンゼル・ワシントンの熱演にも魅せられる、濃厚な作品でした。
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