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ユー・ガット・サーブドのcyberiancorgiのレビュー・感想・評価

ユー・ガット・サーブド(2004年製作の映画)
2.0
劇中で起きる、主人公にとっての大きな転換点とも言えるある事件、それは彼を取り巻く環境、社会、貧困、教育、排他、などなどに起因する、映画的に旨みのある要素、だったと思う。
弱者がいたずらに消費されゆく問題への提起。
彼は友を失い、財産を失い、信頼を失い、ともすれば青春時代そのものを失いかけた。
現に、仲間の1人はその犠牲となり、命を落とした。彼の退場のその淡白な描写は、死が当たり前のように身近にあることへの、ある種の慣れ、仕方ないことである、とゆう諦観めいた反応で、劇中で1番ハッとさせられた。
ぜんぜんドラマチックじゃない。
殺されたことへの報復もない。
それが、日常だったから。
このノリノリの世界の裏にあるリアルの問題、それは描こうとするならきっと90分じゃ足りない。

だから、それらはいっそ描かれなかった。
せめてもの手向けに踊って1番になってやろうと、そうゆう方向へ向かった。建設的だ。
でもその結果、物語の大きな難所は、なんか良く知らない近所のおっさんのセリフ1つであっさりと全て解決してしまい、1度は途切れた友との絆は、その場のハイになったノリで復縁、アゲアゲのテンションそのままに、ダンス、ダンス、ダンス、やり切って気持ち良く終わり。はっぴーはっぴー。

主人公が超えるべき障害は確かにあったはずで、それらは提示されていたはずで、だけど彼らはそれをガン無視してフツーにその横を平然と通り過ぎて、ラストまで踊り切ってしまって、映画とゆうものの捉え方がずば抜けて自由な作品だったなあ。
なんなら、主人公は成長すらしていないんじゃないかな。
お金に代わる何か特別なものを得たワケでもない。大切なことに気付いたワケでもない。
いつも通り、ヤバい仕事したり、仕事でミスって、ピンチになったり、友だちとケンカしてスネたり、仲直りしたり、ダンスバトルで日銭を稼いだり、きっと彼らにとっては何ら変哲のない、人生のある一瞬の切り抜きでしかなかったような。
ドン底から這い上がれ的な、感じもなく、良い加減大人にならないとなみたいな憂いもなく、ラップのようなとめどない感情の洪水って感じでもなく。
ただ、踊っていた。
なので、それをただ眺めていた。
人間の、身体はすごい。すごいなあ…。

勝ち負けが全てじゃない、みたいなノリで話を進めてきたのに、いきなりずっと言ってたことぜんぶ放り投げて、勝敗にこそ意味があるんだ!ふざけんじゃない!
みたいな情緒不安定すぎるおっさんのあのキャラクター性が作品そのものを象徴しているなあ、と思ったり。
みんなフィジカルめちゃくちゃヤバいのに、話の芯がぶれっぶれなの、笑う。
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