たてぃ

国家の女リトルローズのたてぃのレビュー・感想・評価

国家の女リトルローズ(2010年製作の映画)
4.2
ナチスドイツが去った後もポーランドはユダヤ人排除を自らの手でやっていたという暗く悲しい過去のお話…

1960年代後半の東西冷戦の真っ只中、ソ連支配下の共産国家であるポーランド。秘密警察に勤める男とその恋人。ある日、反体制の動きがある作家の中年男を監視するよう命令が下る。恋人はその中年男とは知り合いのため、秘密警察の男は恋人を色仕掛けで近づかせ、彼の情報を得ようと画策する。いわゆる彼女をスパイにしてハニートラップを仕掛ける展開。彼のためならと恋人もそれを引き受けるも…

官能モノとジャンル化されるかもしれませんが、歴史モノとしても十分鑑賞出来ました。話の流れは「善き人のためのソナタ」に似ていて、監視対象の中年男がパリに留学経験があるため西側の文化に精通しており、また彼女の知らないインテリ層の世界を体験することにより中年男に徐々に魅了されて行きます。一方の彼氏(秘密警察)はボクシングで成り上がった体育会系の若者でキレやすいキャラ…

物語の終盤では民主化を求めて学生を中心に立ち上がった「三月事件」も描かれており、これを機に政府は「表現の自由だと?そんなこと言う奴らはみんなユダ公」とばかりに反ユダヤ主義を加速させます。そしてそれに同調する市民…元々そういう気持ちが根底にあってそれを爆発させ口にする姿…特にヒトラーを肯定する市民がいたシーン…マジで怖い…

ロマン・ポランスキー監督も自由な作品作りのために三月事件よりも数年前に西側に移りましたけど、ポーランドに留まっていたら今のポランスキー監督はいなかったでしょうね、彼もユダヤ人の血が流れてますし…
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