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三人の秘密のyabaioriのレビュー・感想・評価

三人の秘密(1950年製作の映画)
4.0
『三人の妻への手紙』においては、自分たちのうち一人の夫が駆け落ちをするのだと聞かされた女たちが、それぞれの結婚生活を振り返るのだった。翌年の本作では、事故で生死をさまよう子供が自分たちの誰かの実の子だと知った女たちが、それぞれに自らが子供を養子に出す決断をした経緯を振り返ることになる。
養子というモチーフは、いかなる家族関係が自然なものであるのかという問いを提起する。母が自らの子供を育てることこそが自然ではないのか? しかし実の家庭でもそこに父親が欠けているなら養父と養母がいる家庭よりも不自然ではないのか、云々。本作はこうした問いを立てる過程で女性の被っていた様々な困難――いわゆるキャリアウーマンへの白眼視、水商売の女性の被る搾取など――に目を向けている点でも先駆的だが、なによりラストの展開が素晴らしい。養子による不自然の導入がもたらした自然なる家族関係の崩壊は、最後に女性たちの連帯により、いわば自然を超えた不自然、事実よりも真実な虚構の関係の構築により引き受けなおされる。そのとき世界の意味は更新され、なんの変哲もない風景さえもが新たに新鮮な美をそなえたものとして再発見される(ラストのセリフ。この展開は『地球の静止する日』にも似ているが、この世界の更新の契機を外部の存在の突然の襲来ではなく作品の内的な展開にこそ見出した本作の方が優れている)。
後にサークの『わたしの願い』を手がける女性脚本家のジーナ・カウスが共同脚本。
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