人類ほかほか計画

少林寺列伝の人類ほかほか計画のレビュー・感想・評価

少林寺列伝(1976年製作の映画)
-
堂々2時間、ショウブラザーズのオールスター大作。ショウブラザーズって『キル・ビル』でロゴが使われたりしてすっかり安物のB級映画会社みたいなイメージになってるけどこういうのを観たら、日本でいうと黄金の全盛期(1957〜1961年ごろ)東映京都時代劇みたいな、すごい勢いのあった会社だというのがよくわかる(『キル・ビル』といえば、なぜかサントラCDにまで収録されてた仮面ライダーがジャンプするときみたいな効果音、この『少林寺列伝』に使われてる音)。ゴールデン・ハーベスト社のほうがよっぽど安い映画平気で作りまくってる。この映画の原題はズバリ『少林寺』で、オールスター大作の決定版には余計なサブタイトルは付けずに直球で行くっていうのも東映時代劇と同じ(『旗本退屈男』『水戸黄門』など)。
お話はリー・リンチェイのデビュー作のほうの『少林寺』と違って、ショウブラ印の講談的でファンタジックな『少林寺三十六房』シリーズとかの源流って感じだけど大作だけにしっかりゆったりしてて『忍たま乱太郎』やら『ハリー・ポッター』やらのような修行生活の日々が入門からじっくり描かれる。
脱走を許さん風潮とか暴力性とかがもはや監獄実験状態になってて、立派な仏教の寺を描いてるはずなのにこんなんでええんかいってなるのも『少林寺三十六房』と同じ。
ジャッキー・チェンの『少林寺木人拳』に出てきた木人ロボットダンジョンの元ネタが出てきて、それはこの監獄少林寺から脱走するために何故か通らなければならない木人巷というダンジョンに仕掛けられた、どういう原理で動いてるのかわからない殺人トラップ(アドベンチャー映画に出てくる古代遺跡のトラップによく似ている)としての高速回転木人ロードで、どういう寺やねんというのはこの元ネタを見ても、いや余計にわからない。
(ちらっと調べたところによると、史実での「木人巷」は詠春拳で使われる「木人」とは関係ない感じで、実際の少林拳の卒業試験的なやつのときに、専用の回廊で百人組手のようなことをやってそれを突破する試練みたいなのがあって、その際に被験者と試験官たち全員が安全のために木製の防具を身体中に装着して行うので「木人」と呼ばれる、みたいな話であった。ということはビジュアル的には『少林寺木人拳』のほうがこの映画のよりは近いっちゃ近い。)
現地ロケのリンチェイ『少林寺』と違って、内陸の高地の感じはぜんぜんしないオープンセット。でもでかい。
ラストの清朝の軍勢との大乱闘は、槍や弓や剣を持つ敵が周りにいっぱいいる中で、メインの戦いの多くが何の必然性もなく(強さ比べとかではなく普通に襲撃と迎撃であり殺し合い。『ドラゴンボール』並のずば抜けた超人たちというわけでもない)素手の格闘を呑気にやってる感がどうしても否めない。史実での少林拳は修行はいざ知らず、有事の際は専ら槍での戦術だったと言われる(奈良の宝蔵院の僧兵の槍術とかと同じ)。何で映画だとこういうことになるかというとやはりブルース・リーショックということになる(日本の時代劇における「三十郎ショック」になぞらえて言うと)。