Omizu

旅情のOmizuのレビュー・感想・評価

旅情(1955年製作の映画)
4.5
【第28回アカデミー賞 監督賞、主演女優賞ノミネート】
1952年にブロードウェイで初演されたアーサー・ローレンツの戯曲『カッコウ鳥の頃』の映画化作品。『アラビアのロレンス』デヴィッド・リーン×大女優キャサリン・ヘプバーンとなればそりゃ期待しちゃうよね。NY映画批評家協会賞では監督賞を受賞、アカデミー賞では監督賞と主演女優賞にノミネートされた。

いい意味で期待していたのとは違った。メロドラマというより中年女性の孤独と憂鬱を静かに描き出している心理ドラマ。

まずテクニカラーで撮ったヴェニスの街並みがなんと美しいこと!そこで思い悩むキャサリン・ヘプバーン。連想したのは『ロスト・ドーター』オリヴィア・コールマン。表面上は強くあろうとしているが、その内面はボロボロ。今にも崩れ落ちそうになっている。それを見事に表現している。キャサリン・ヘプバーンの演技もリーンの演出も素晴らしい。

現地でランデブーは起きるものの、それは女性が立ち直るための手段にすぎない。ラストのヘプバーンの表情、明らかにそれまでとは違う。彼女に何があったのか詳しくは分からない。でも確かに変わった。素晴らしい演出で魅せていく。

観光地で起こるメロドラマではなく、一人の女性の内面をじっくり描いた作品としてみられるべき。さすがリーン、さすがヘプバーンとなる静かなる傑作。
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