荊冠

わが谷は緑なりきの荊冠のレビュー・感想・評価

わが谷は緑なりき(1941年製作の映画)
5.0
ラピュタの主人公パズーが住む鉱山町のモデル。
ジョン・フォード映画は説教くさいというか「家」「全体」への意識が強すぎて(時代の価値観的に仕方ないことなのだが)、作品の出来は大変素晴らしいが共感はしない、といった感想に着地しがちなのだが、本作だけは別だった。
社会と戦う大人たちの中でもまれながら自我を築いていく子供というキャラクターに僕はどうも感情移入しがちな節があり、本作も鉱山町で悲喜こもごも味わった少年ヒューの物語であるために引き込まれてしまったのだろうと思う。
兄たちが父親と対立し全員ウチを出てしまった時、ひとり食卓に残るヒューの「僕は父さんといる」という無言の主張の何と健気なことだろう。また、イヴォールを亡くしたブローウィンがそれでも彼の仕事着を毎朝用意してしまうと言ったのを聞き、これからは僕のために用意してくれと提案するヒューの男性性の芽生えや彼なりの思いやりは愛らしさに満ちている。
そしてジョン・フォード作品定番肝っ玉母ちゃんキャラは健在。
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