TAK44マグナム

バッド・チューニングのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

バッド・チューニング(1993年製作の映画)
3.7
今を精一杯、楽しんだもの勝ち。


リチャード・リンクレイター監督による青春群像劇。
15年製作の同監督による「エブリバディ・ウォンツ・サム!!」は、本作の精神を受け継ぐ「続編」だということです。
また、「バッド・チューニング」はタランティーノが選ぶオールタイムベスト20にも選出されています。

群像劇なので登場人物は多め。
出番の多さとキャラクター設定から、主役はアメフト部のクォーターバックであるピンクなのでしょう。
ピンクはもちろん愛称で、本名がフロイドだから「ピンク」。そのまんまですね(笑)
コーチから「酒やドラッグは禁止」という誓約書にサインを求められ反発するのですが、朝を迎える頃に彼がだす「こたえ」が本作のテーマだと思います。
本作の舞台は1976年の夏。
激動の60年代が終わり、アメリカは「失われた時代」に突入していました。
そんな時代に多感な時期を過ごす若者たちは
何を考え、何をして過ごしていたのか。
ピンクは、制約された中でアメフトを続けることに疑問を持ちます。
はたして、彼はどうするのか?

・・・という骨子があるにはあるのですが、映画の大半を占めるのは彼らの馬鹿騒ぎなんですね。
高校最後の夏休みの初日、羽目を外しまくる学生たちの姿をそのまんま垂れ流すスタイルで、筋らしい筋は特にありません。
でも、これがすごく面白い。
学校で受け継がれている伝統で、新一年生は三年生による愛のムチを受けなければならず、男子はケツをしこたま叩かれ、女子はケチャップやら卵やらを全身に浴びせられます。
逃げる新一年生に、追う新三年生。
側から見ると本当にバカですけれど、どこへ行ってもこんな意味のないことに躍起になっているものなんだなぁと思います。
大人になる通過儀礼なんですよね。
ピンクに認められたロン毛の野球少年ミッチは夜のドライブに誘われ、友達たちより一足先に大人の仲間入りをはたします。
主に酒、マリファナ、車、そして女子(苦笑)

大人といってもピンクたちもまだ高校生、やっていることはくだらないことばかり。
家でのパーティが無理となると、野外でのパーティに突入です。
そこに集まってきた登場人物それぞれにちょったした出来事があったりなかったりして、朝が来る前に解散してゆきます。
そして、朝を迎えても次の夜に向かって疾走するだけ。人生って、結局はその繰り返しで、ちょっとずつ何かが変わったり、何も変わらなかったり、いつか迎えるタッチダウンまで走り続けるしかない。
無限にわかれている道筋だから、長い夏休みの初日に筋なんて野暮なものは持ち込まないのか、とにかく活き活きとバカやっている若者たちを映し続けるリンクレイター監督もまた、こんな風にバカをやって青春時代を過ごしていたのでしょうか。

93年製作の本作、まだ若かった大物スターたちが数多く出演しています。
ピンクたちの兄貴分役でマシュー・マコノヒー、少年たちのケツを叩くことが生きがいの留年生役がベン・アフレック。
あと、出番はそんなに無いのに強烈な美形ぶりで印象に残るのがミラ・ジョボビッチ。
彼女の歌が少し聴けますよ。
ちなみに、ミラの初登場シーンで一緒にいるショーン・アンドリュースはミラの最初の旦那さんで、リュック・ベッソンと結婚する前に僅か16歳の若さでミラはショーンと結婚、すぐ離婚しています。
レニー・ゼルヴィガーも出演しているらしいのですが、ちょっとどこに出ていたのか分かりませんでした。
あとは、アダム・ゴールドバーグや、ウイングス・ハウザーの息子で「ワイルドスピードX2」の悪役であったコール・ハウザーなども出演。
対して主演のジェイソン・ロンドンは、近年では「ゾンビシャーク/感染鮫」の警備員役などが主な俳優業で、甘いマスクのイケメンだったのですが伸び悩んでしまいましたね。


映画の終わりに明確な何かが得られる作品ではないので、根を張ったストーリーを求める方には不向きかと思います。
何だか分からないけれど、あの時代の夜の匂いがしてきそうな、そんな空気を感じてみたい方にオススメ。
ラリっちゃうかもしれませんけれど(苦笑)


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