かのん

シルミド/SILMIDOのかのんのレビュー・感想・評価

シルミド/SILMIDO(2003年製作の映画)
3.6
1968年の北朝鮮との冷戦真っ只中。父が北朝鮮に亡命したことで共産主義者とされ、ヤクザとなり殺害未遂で死刑判決を受けたインチャン(ソルギョング)。死刑宣告を受けた彼に、死刑を逃れるある取引が持ちかけられる。彼を含めた死刑囚ら31人は無人島シルミドに極秘に送られ、北朝鮮の金日成暗殺のために殺人兵器の特殊部隊として過酷な訓練を受けることになる。

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衝撃の実話ベース。作品では死刑囚や人間のクズ達31人がシルミド(実尾島)に送られるが、実際は一般人。高額の給与で雇われていたが、計画が立ち消えたことで支払いが停止し、怒り狂った隊員達がソウル市内で銃撃戦を図ったらしい。

作品は地面からゾンビのように這い上がってくる男達の姿から始まる。彼らが一体誰で、何のために潜んでいたのかが気になりその瞬間から引き込まれる。

「22年目の記憶」では金日成になりきったしがない舞台俳優を演じたソルギョングが、今回は金日成を暗殺する秘密部隊の隊員に。それだけで十分興味深い。ソルギョングは一見普通に見えるが全然普通じゃない人の演技がとても良いと思っていて、今回は特に訓練中のシーンで目を開けたまま水に潜って画面に顔を向けている時の気迫が堪らなかった。

2年3年と金日成の暗殺だけを考えて肉体的にも精神的にも酷使された訓練をしていて、いよいよ決戦の日を迎えたタイミングで計画中止が宣告されて完全に戦意喪失。政府の非情すぎる命令により混乱に陥る648部隊とその上官達。命令により苦悩する隊長やその部下達、1人1人の気持ちがわかるからこそどう進んでも心が痛い。

最後、銃撃戦を繰り広げる648部隊。隊員1人1人の心の叫び、とった行動、結末に苦しさが止まらなかった。
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