ねぎおSTOPWAR

韓半島 -HANBANDO-のねぎおSTOPWARのレビュー・感想・評価

韓半島 -HANBANDO-(2006年製作の映画)
3.8
キム・ギヨン「下女」のあの男の子役で、かつソン・ジュンギ主演「ディヴァイン・フューリー」の神父役アン・ソンギさん!!!
彼の主演ってことで楽しみにしていましたが・・・

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アン・ソンギさんが大統領で、南北の鉄道開通が平和的に行われようという中、植民地時代に鉄道を引いたのは日本で、時の王 高宗との契約書があるぞ!と日本がイチャモンを付けてくる設定。そこにこの契約書に押した国印が実は偽物だったということで、真の印を探す大学教授が登場し、政府は二分される・・そんなストーリーなんです。
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これって《反日》映画??

例えば・・
南北朝鮮の映画「シュリ」「JSA」他多数
ベトナム戦争他の多くの戦争映画多数
WWⅠ「1917・・」他多数
WWⅡ「パールハーバー」「ハクソーリッジ」他多数
・・これらの映画をリアルだとか褒め、変な日本語を話す役者に文句も言わず、日本が出てきても《反日》だとか言わず・・

でね、なぜ韓国映画に日本が出てくると急激に公平がぐらつくんでしょう??
アメリカが歴史を脚色しても「映画だから・・」で済むのに、韓国映画だとブーブー言っちゃう。

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《映画自体についてはずっと下の方に書いています。ここからしばらく映画で扱われている歴史のこと書きますので、嫌な方は飛ばしてください》





冷静に言いますけどこれは反日映画なんかじゃないと思います。
そもそもその定義ってなんでしょうね?プロパガンダ要素?
私がもし反日映画作るならこうします。
➡まず日本人はむっちゃくちゃ悪いことします。これでもかってぐらい残忍非道な日本人。
そして苦しめられたヒーローが、苦悶の表情の日本人をめっためたにする。
史実なんてクソ喰らえと痛快にしますけどね。

この映画では王宮での過去の事件について、下記の通り残忍な行為をむしろ弱めていましたし、最後日本人が謝ります。Disney映画でも、本当の悪者って謝りませんよね?
現実に村山さんと河野さんは謝りましたしね。それを忠実に踏襲、再現しているように思えます。

韓国映画界って「マルモイ」「暗殺」「お嬢さん」「密偵」など日本軍出てくる話の時、日本人を敵として描かず、朝鮮人なのに裏切って日本側についた同胞を敵として描きますよね。これって日本に遠慮とかじゃなく、同じ民族内で収まるストーリーは他の民族とのいざこざは巻き込まれにくいというね。これは世界中の人々が自分のこととして捉える際にも理解共感しやすいという仕組みなのでは?
人間も起こることを誰かや外のせいにせず、全て自分のこととして捉えたほうが前を向けるというのありますよね。

今作の製作者の眼の先には韓国国民がいると思います。つまり色々な意見や可能性を自国民に突き付けてる、提示していると思うんです。
日本人が見ることを想定して・・ないと思いますよ。
実際に日本とは文化的経済的に切れない関係性だと、それは認めざるを得ない中、「過去の因縁、怨念はあれどそこのプライドにこだわってずっとNOを言い続けますか?」「つかず離れずの関係性で上手くやっていきましょうよ」というふたつの論理。
これが主題じゃないかなあ。そう聴こえますけど。
現実の世ではたぶん鉄道のこと日本政府は何も言って来ないし、自衛隊はそんな簡単に動かないってわかっていて脚色していますよ。緊迫感を高めるためにね。(映画として全然うまくいっていないことは別問題)

むしろこの作品は韓国国内で叩かれたそうです。
政治的な話題はナイーブですし、リアリティのバランスは難しい。
いろんな意見があったでしょうが、日本寄り過ぎるという評もあったようです。双方の国の右翼からガーガー言われる映画・・。気の毒です。

確かに時系列が飛んで、植民地時代の旧日本軍も描写されます。
そのシーンは冒頭30分前にある日本による王妃殺害。
これ事実です。
日本人のわたしは、同じ日本人がやったことだとすると勘弁してほしいくらい嫌な事件ですが、残念ながら事実です。
日本の歴史の授業では教えてくれませんでした。
いわゆる閔妃(みんぴ)暗殺です。
「ロシアに近づく”反日”の王妃を殺害しよう」と計画したのは三浦五楼という人物で、後に報告を受けた明治天皇が「奴もやるのう」と言ったことが記録されています。相当に無慈悲で無計画でハードな殺害なのでここに書くのさえ躊躇われますが、映画で描かれた内容より遥かに酷いものであったそうです。
映画ではおそらく高宗がある意志の元、本物の国印を隠したという流れを重視して、柔らかい演出に脚色しています。(ここに韓国民が「事実と違う!」と憤ったならそれはわかる)

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映画としてですが・・


「シルミド」を撮ったカン・ウソク監督の作品としては・・・
なんか感情移入しづらかったんですよね。
大統領、大学教授、どちらも背景というか観客をすっと引き寄せるための画も時間もなかったかなあってのが正直なところ。
おそらく時の大統領と過去の王 高宗を重ね合わせるという大目的があって、高宗の心情の描写に寄った結果かなあって思います。行きすぎちゃいましたね!

あとは演技。
アン・ソンギさんはもうピカってますが、大学教授役のチョ・ジェヒョンさん。
彼はキム・ギドグ監督の「魚と寝る女」に出演。「悪い男」では主演なんですが、この作品でもちょっと「んっ?」って思っちゃいました。怒りやら憤った感情を出すのはお得意なのかもしれませんが、押すばかりで引けないというか、一辺倒なんですよね。眼はとても強いんですけどねー。たぶん来る役は限定されちゃうかもです。


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