Mikiyoshi1986

動くな、死ね、甦れ!のMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

動くな、死ね、甦れ!(1989年製作の映画)
4.3
前売り券を買ってたこと忘れてて、先週慌ててリバイバル上映に駆け込み!
遅咲きの天才映像作家ヴィターリー・カネフスキー監督が54才にして、世界中から羨望を集めるに至った奇跡の傑作『動くな、死ね、甦れ!』

ソ連崩壊が目前に迫った89年に制作された本作は、カネフスキー監督が幼少時代を過ごした極東の炭鉱町スーチャンが舞台。
少年の純粋な視点から戦後の記憶を切り取った、半ば自伝的な作品であります。

少年ワレルカの居住地区には労働地区の市場、第二次大戦直後の日本人捕虜や囚人の強制収容所がひしめき合う典型的な旧ソのゲットー。
そして危なっかしい純粋無垢な悪童ワレルカと、彼からちょっかいを受ける少女ガリーヤはまさに彼の守護天使に相当。
ワレルカを度々ピンチから救い出す大人びたファインプレーに対し、余りにも切なすぎるエンディングを叩きつけます。
彼女が舟で助けに来た時の、少し女性らしさが増した瑞々しさよ。
遠くを見つめたあの時の、儚い表情の美しさよ。
遠い記憶の淡い童心が呼応するかのような、奇跡の映像と演出に感嘆。

彼らの日常生活に介在するソ連時代の重々しい空気と殺伐とした風景、そして度々挿入される日本の唄には日本兵抑留者の望郷を漂わせ、絶望の果てでただ生き延びるだけの苛酷さを演出します。
かつてトリュフォーも幼少期の自伝的作品『大人は判ってくれない』で一躍有名になりましたが、
フランスとソ連でこれほどまでに子供時代の悲壮の明暗が別れるのも顕著であります。

抑圧的な社会の閉塞感と子供のダイナミズムとが対比して、このように永遠に心に刻まれるであろう抒情詩的映像が生まれたことに感謝です。
今回のリバイバルということは、Blu-ray化も期待しちゃっていいんですよね?!

あと本編とは関係ないんですが、たまたま左隣の席に我が青春のバンドNICE VIEWのギターボーカルさんが座っていらして、勝手に異様な緊張感を保ちながら全ての感覚を断って鑑賞することができました。
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