行方知れずの兄を捜すため、単身サンフランシスコを訪れた聴覚障害者の女性(スーザン・ストラスバーグ)が、ヒッピーの青年(ジャック・ニコルソン)率いるサイケバンドに庇護される。前年度「白昼の幻想」の姉妹編となる、アメリカン・ニューシネマ。
当時のヒッピー・ムーブメントを同時代性豊かに収めながら、「生きる意味」を模索する人々のジタバタ劇を描いている作品。民族調のアートワーク、ファズギター重視のロック音楽、ラリラリのトリップ描写など、その時代の空気が絶妙に封じ込められている。
すべての登場人物が「生きる意味」を探求しているところがキーポイント。出発点は同じなのだが、探求の手法と解釈が異なるため、軋轢が生じてしまう。ドラッグ未経験者であるヒロインの視点を通して、ヒッピーのダメな部分をしっかり提示してくれる。
読唇術で言語を理解する聴覚障害者の役柄をスーザン・ストラスバーグが熱演しており、「時代に翻弄されるヒロイン像」をものの見事に体現している。ドラッグに意識変容を求めながら、踏んだり蹴ったりな状態に陥っていくヒッピー族の描写にも笑わせられる。