イチロヲ

みな殺しの霊歌のイチロヲのレビュー・感想・評価

みな殺しの霊歌(1968年製作の映画)
4.5
5人組の有閑夫人に怨恨を抱いている青年(佐藤充)が、凄惨な連続婦女殺人事件を引き起こしていく。「女性が主犯となる性的虐待」を問題提起している、サスペンス映画。東宝の佐藤充が、松竹に招聘されている。

端的に言うと、「人生イージーモードの女性犯罪者」に対する鬱憤の爆発を描いている作品。他社が展開するエログロ路線に対して、松竹が本気で対抗しているような雰囲気もあり、成人向けの劇画を映像化したような世界観が構築されている。

本編ドラマでは、主人公に同調する訳あり娘(倍賞千恵子)との交流劇、標的にされた女性陣の葛藤劇、警察組織の捜索劇が展開。女性に対するバイオレンス描写が、加藤泰の映画術で表現されており、女優陣の見事なヤラレ演技に感動することができる。

何よりも、心情吐露を排除することにより、主人公の思考を鑑賞者に汲み取らせようとする手法が素晴らしい。「暴力の正当性を考えさせる」という側面ではパワー不足の感が否めないが、「加藤泰meets今村昌平」的な刺激剤がピリリと効いている。
イチロヲ

イチロヲ