マヒロ

シャーロック・ホームズの冒険のマヒロのレビュー・感想・評価

2.5
シャーロック・ホームズの相棒であるワトソンの死から50年後、彼の遺言に従い遺品がしまわれた金庫が開けられる。そこには、数々のホームズとの冒険の中で、ある理由から小説として発表されていなかった物語があった……というお話。

ビリー・ワイルダーによるオリジナルの『シャーロック・ホームズ』で、記憶消失の女性との出会いをきっかけに大きな陰謀に巻き込まれるホームズ&ワトソンを描いている。
原題は『the private life of〜』となっており、もう少しホームズの日常の話が中心になるのかなと思っていたら、普通に一つの事件を解決していくだけの話だったので若干違和感があった。どうやらもっといくつもの事件を取り扱う長い映画を上映時に短くさせられていたらしく、そう言われると最初の方にある小噺みたいなエピソードの唐突な不自然さも腑に落ちる。

とは言え全体的には真っ当なミステリーでおかしなところがあるわけではないが、ビリー・ワイルダーの映画としてみるとかなり平凡な出来で精彩を欠いていたように思えた。そもそも今作のホームズとワトソンはイマイチ魅力がなくて、例えばジャック・レモンやウォルター・マッソー、トニー・カーティスがやっていたキャラクターのような愛嬌が感じられず、出ずっぱりの割には印象に残らない。見知った顔だからというのもあるかもだが、ホームズの兄・マイクロフトを演じたクリストファー・リーがスラリとした体躯に禿げ上がった頭が格好良くて、こちらの方が印象深いかも。この人イロモノ役ばかりやっているけど、こういう普通の人演じてるのがもっと見てみたいな。

ストーリーや掛け合いについてもそこまで盛り上がりが感じられず、既存のキャラクターということで監督ならではの色みたいなものが出しにくかったというのもあるのかなと思った。冒頭でロシアの富豪に求婚された冒頭でホームズが逃げおおせようとする流れはそれっぽいが、それ以降の本筋ではそういうコミカルなところも殆どなくなってしまう。
ワイルダーみたいにクセの強い監督は、こういう版権モノやる時はそれこそガイ・リッチー版みたいに思いっきり原作を染め上げてくれた方が個人的には嬉しいかなと思える一作だった。

(2022.158)
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