くりふ

ダラパティ/踊るゴッドファーザーのくりふのレビュー・感想・評価

3.5
【ラジニカーンカンになる】

これは丁寧につくられた、端正な映画だと思うのですが、躁的ラジニ映画だと思って借りたので、その意味で肩透かしでした。鬱までいかねどシリアスじゃん。

タイトル「踊る」の語感に騙された(笑)。ダラパティとは頭目のことだそうですが、ゴッドファーザーとは違うしね。

インド古代叙事詩マハーバーラタの中にある、神の子カルナの話を下敷きに、任侠と家族愛、バイオレンスとダンス、などなどマサラさせた作品ですね。

捨て子という出自の傷を抱え、侠気と狂気のマサラで育ったキレる男を、ラジニが湯気立てて熱演。笑わぬ笑えぬラジニ。いっぱいぶち殺しまっせ。この後スーパースター冠の付く、歌い踊る正義のオッサンに親しんでいると、けっこう意外です。

まあ150本以上出ていて役歴豊富で、元々悪役出身だし、インド人はビックリしないのでしょうが。『バーシャ』にちょっと近いかな?

ラジニがいつも通り踊っても、一員として集団を称える踊りでオレ節は弱く、強烈美女が出て来るわけでもなく、一体感を高める優しさが表に出てますね。

マニ・ラトナム監督作品は初めてです。自然美などを素直に撮るんですね。逆光の画が拘って撮られていて美しい。そして陽の光…夕日がとても優しい。後で『マッリの種』をみたら、同じ撮影監督で美意識が似てるな、と思った。

その一方、生きたまま腕ェ切り落とすわ、生きたまま火ィつけるわ、と、連打される活き造りバイオレンス! でも、何となく共存しちゃってます。

そうかと思うとその先で、お母ちゃんの膝枕があま~く待ってたりもして。さらに、そこに溺れるのが…うっぷ。これちょっと濃ゆい。凄い振幅だなあ。硬直する邦画が忘れた豊穣がある気もしますが(笑)。インド人はビックリだ。

とはいえ、やっぱり同じアホなら踊らにゃ…的ラジニ起爆がないのは寂しい。のめり込める要素は少なかった。劇場の大画面で浸ったら違ったかもですが。ぜ~んぶ家族愛で包んで終わらせてしまう暴力性(笑)には、のけ反りました。

ラジニに殺された連中が、ゾンビになってクレームつけて来ないだろうか。ラトナム監督作には興味が湧いたので、ラジニ映画でない『アンジャリ』『ボンベイ』などは、レンタルがみつかったらみたいなーと思いました。

<2012.7.23記>
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