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Peaceのmidoredのレビュー・感想・評価

Peace(2010年製作の映画)
4.0
岡山にある福祉事務所で働く老夫婦を中心に、人や猫を淡々と観察するドキュメンタリー。ダニとネズミだらけの部屋で1人ひっそりと死を待つ老人、知らぬ間に増えてある日ふといなくなる野良猫たち。生まれて死ぬという当たり前の現象を穏やかに受け止めるような、マザーテレサの写真が静かに見守るような作品でした。

1番印象的なのは在宅ホスピス中のハシモト老人です。戦時中、男はみんな一銭五厘の価値しかないと言われ、生き残るのも肩身が狭かったという話は忘れられません。昭和で止まったような茶色の部屋で末期の肺癌をわずらいながらPeaceを吸い、皆にみかんをあげようとし、診察にゆくにもスーツとネクタイ姿でおしゃれをします。病院の人たちには大人気。

ごく普通の人なのですが、生産性や金銭価値に還元できない、生きて存在することの不思議さや尊さすら感じました。それを一銭五厘の安さで使い捨てるのが戦争なんですね。横断歩道で泣きべそをかいていた少年を一銭五厘にしてはならないと強く思いました。

タイトルのPeaceはタバコのPeaceとRest in Peace、そして平和のPeaceからつけたのでしょう。後からしみじみ効いてくるタイトルです。
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