Automne

SOMEWHEREのAutomneのレビュー・感想・評価

SOMEWHERE(2010年製作の映画)
4.4
想像以上に良かった。ソフィア•コッポラのセンスとシーンの空気感に全振りして製作してるスタイル大好き❣️

物語は世界を飛び回るスター俳優が、妻が家を出ていって面倒見れなくなった娘とひとときを過ごすというもの。筋書きだけ見ればなんてことはないのだけれど、メタファーや意味深なシーンが多く、人間の所作や語らない内面というものにフォーカスしていて私小説的。

「アルパチーノとの日々を……」とかセリフにもあったように、本作の主人公はフランシス•フォード•コッポラ、娘はソフィア•コッポラに置き換えて見てみるとかなり理解は平易な気がする。本作はかなり自伝的。主人公よりも娘に感情移入したほうがドラマのほうはすんなりと伝わってくる。ここで女性を主人公に据えなかったところに、彼女の作家としての変化を感じる。(ただ多分、主人公を娘の方にしたほうが"ウケ"は確実に良かった。分かってやってるんだと思うけど)

シーンにおいても煌びやかな世界を描きながらも、出張ポールダンサーがしゃがんで折り畳み式ポールをしまっているシーンや、娘が去りひとりになったあとの部屋でごみの溢れそうなお盆を重ねて片付けようとするシーンなど、日常の惨めな瞬間や孤独な空気に対してフォーカスされていてとても楽しめた。なんとなく察していても口に出さない感じ、大事なセリフはヘリコプターのプロペラ音にかき消される。そのなんとも言えない切なさ。

ジャケ写になってるシーンも好きだし、授賞式で娘がドレス着て出てくるところ、ラウンジで酒飲みながらトランプ、カジノでギャンブルのやり方を教えたりするところ、そういうふたりの空気感を繊細に切り取ったシーンの数々がとても好き。本作にエンタメ要素をもう少し足して、主人公に貧困とか今っぽい属性を付与し、大衆の共感度を上げて分かりやすくしたら『C'mon C'mon』的になると思う。

ソフィア•コッポラ監督が好きなのでかなり贔屓めですが、やっぱり期待通りの彼女。良作です🫰
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