Reona

SOMEWHEREのReonaのレビュー・感想・評価

SOMEWHERE(2010年製作の映画)
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2023/9/28 池袋にて鑑賞

長尺で定点のカットが多くて、そのどれもが美しくて心地よかった。退屈な人には退屈かもしれないけど、良くも悪くもこの監督の作品の「うっすらと膜を張るような、全体的な陰鬱さ」に繋がっているのだと思う。

今回は娘と過ごす夏のバケーションのキラキラで、あまり陰鬱さは感じなかった。有名な、プールの中で紅茶を飲む仕草のシーンを大画面で見た時、あまりに眩しくて鳥肌がたった、とっておきたいと思った。

シュールで静かに始まる、乾いた滑稽さを作るのこの監督のやり方だなあと思う、ロストイントランスレーションの日本人然り。笑えるんだけど、それが人の心のすれ違っている様や虚空と孤独を浮き彫りにしているなあと感じる。
人ってキラキラに見える人でもほんと孤独だよね、ハリウッドスターじゃないけどわかる気がするもん。富も地位も名声も手に入れてなお、「俺はなにもない空っぽの人間だ」と電話で吐露するシーン、好きだった、やっとぐちゃぐちゃの本音を見せてくれた。カッコつけた女遊びや華やかなパーティよりも、結局心の通いあった娘と戯れる時間が何よりも嬉しかったんだろうな。

カッコつける前に、それを見逃さず大切にできる人間でありたい

父と娘って関係って独特だなあと思う。
幼い頃、激務かつ単身赴任で父が家にいた記憶が殆どないけど、休みの日に色んなところへ連れて行ってくれたこと、車内でかかっていた音楽は鮮明に覚えている。母親に理不尽なことを言われた時、頭のいい父らしさで慰めてくれた時のことを思い出した。

最後のシーン、羊文学のハイウェイを思い浮かべながら観ていた 国も世界観もまるで違うけど。正直じゃなくて本当は怖いだけ。
逃げても逃げなくても傷つくなら、傷つきながらでもゆっくり進むのも良いな、なんて思った。
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