4番のトラック

SOMEWHEREの4番のトラックのレビュー・感想・評価

SOMEWHERE(2010年製作の映画)
4.2
「イケてる」人たちの生活とその空虚さの描写はおそらくソフィア・コッポラ自身が見聞きしたものに基づいているのだろうけど、それが脚本としてストーリーに落とし込まれているだけでなく、遠くからのショットの多用や、アイススケートやプールといった記号、その映像の美しさによって、ひとつの世界として緻密に構築されているような気がする。

アメリカ文学に影響を受けた村上春樹が文字で世界を創り出すとすれば、ソフィア・コッポラは同じモチーフを映像で創り出しているような気がする。

個人的に何より好きなのは、選曲がロック中心だということ。いまやロックは落ち目でポップスの主流はヒップホップだけど、「ロックってかっこいいよね」と改めて気付かせてくれる。フェニックスのチョイスがいいのか、コッポラのセンスなのか。ローファイヒップホップのようにアレンジされたYou Only Live Onceが流れた時、なぜか救われたような気がした。

普段の生活を忘れて、コッポラが創り出した世界に逃避行できる貴重な90分だった。
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