KnightsofOdessa

テロリズムの夜/パティ・ハースト誘拐事件のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

3.5
[] 70点

1988年カンヌ映画祭コンペ部門選出作品。ストックホルム症候群の例として頻繁に挙げられる、パティ・ハースト誘拐事件についての作品。誘拐されたパティは目隠しをされたままクローゼットに押し込まれるんだが、そこから目隠し越しに見たメンバーの背景が『鋼の錬金術師』の真理がいる空間みたいに真っ白で、メンバーが代わる代わる開けては信条を述べて閉めていくのが実に滑稽。目隠しをしたまま何十日も生活したことで、風呂の色を真っ赤だと想像したり、過去の記憶まで目隠しに改竄されたり、アジトが真っ暗でだだっ広い穴蔵のように想像したりと、特に前半30分のフワフワした脳内補完が良い。メンバーの威勢だけは良い感じ、ファスビンダーの『第三世代』に近いものがある。今から近所回って新兵リクルートしてくるわ~とか、近所の子供におつかいさせてたとか、呑気すぎて草。一応、パティには状況を理解する冷静さがあったことがモノローグで明かされているので、本作品のアプローチはストックホルム症候群とは異なっているように思える。
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