ボブおじさん

わらの犬のボブおじさんのレビュー・感想・評価

わらの犬(2011年製作の映画)
3.2
リメイク映画で成功する例は少ない。オリジナルが傑作だからリメイクされる訳で、そのオリジナルには根強いファンが付いていることが、更にリメイク化のハードルを上げていることもあるだろう。

特に本作のオリジナルは、その容赦ない暴力・暴行描写により公開時から問題作として、賛否含めた論争となった映画だけに尚更であろう。

何かと旗色の悪いリメイク映画だが、それでも稀にオリジナルに負けず健闘している良作もあるので、ついつい見てしまい後悔する。本作も残念ながらその中の一つとなってしまった。

バイオレンス・アクションの奇才サム・ペキンパー監督の傑作「わらの犬」(1971)を、英国から米国に舞台を移してリメイク。地方に引っ越した男性が地元民の理不尽な暴力に怒りを爆発させるのだが、舞台を米国の地方に移したことでリーマン・ショック以降に全米に顕在する、多様な格差を連想させてはいるが、基本オリジナルから大きな変更は無い。

逆にオリジナルに見られた価値観の違いから生じる些細なすれ違いにより、ジワジワと主人公が孤立していく描写が弱い。いきなり体育会系マッチョ思想の中に放り込まれた裕福なインテリ夫婦が攻撃の対象となってしまうため、心理的に追い詰められた主人公の怒りが最後に爆発するカタルシスが感じられない。

オリジナルが強烈な映画こそ、批判を恐れず更に突き抜けるくらいの挑戦をしてもらいたかったが、暴力暴行描写、心理描写、役者の格など全てにおいてスケールダウンしている印象。リメイクする意味すら感じることが出来なかった。

恋愛映画や文芸作品ならいざ知らず、バイオレンス映画で変化を抑えて手堅く置きに行ってどうするの?というのが正直な感想である。


〈あらすじ〉
ロサンゼルスに住む脚本家のデビッドは、女優である妻エイミーと静かな環境を求め、ミシシッピ州の地方の町にある彼女の生家に引っ越す。裕福なデビッドや美しく華やかなエイミーに対し、エイミーの元恋人チャーリーら地元の一部の男性はからかったり挑発する態度を取り、それは次第に暴力性を帯びてくる。エイミーがチャーリーの仲間にレイプされたのに続き、ある事件が発生。それを機にチャーリーたちはデビッドたちの家を襲う。