ほーりー

三人の名付親のほーりーのレビュー・感想・評価

三人の名付親(1948年製作の映画)
4.0
【古き善き西部劇に捧ぐ一本】

旅の途中、仲間が一人欠け、二人欠け……と本来なら『ポセイドン・アドベンチャー』のようなシビアなドラマになりそうなところ、ジョン・フォード特有のユーモアによって温もりのある愛すべき一品となっている。

早い話、この映画には本当の悪人が登場しない。銀行強盗をはたらいたジョン・ウェイン、ハリー・ケリー・Jr.、ペドロ・アルメンダリスの三人も。彼らを追いかけるワード・ボンドの保安官も。しいて悪人をあげるとすれば画面に一度も登場しなかった赤ん坊の父親だけだろうか。

だから嫌な感じを受けないのかもしれない。

色々と感動的な場面はあるが、ミルドレッド・ナトウィックが産まれたばかりの愛児を遺して召される場面が素晴らしい。

ナトウィックの名演もさることながら、その後ウェインらが亡骸を葬る背景に、ひときわ輝く星の美しさと低音で響くケリーの歌声に心を奪われた。

あと芸が細かいと思ったシーンがある。

ウェインが赤ん坊の体にグリースを塗りたくる場面で直射日光が当たらないようにケリーが帽子で影を作るのだが、後半でとうとう力尽きたケリーに対し今度はウェインが帽子をかざすのである。

初見では気づかなかったけど、描写の一つ一つがよく練られている。

シンプルなストーリーなので見落としがちだが、二度三度と見返すと意外と伏線の多さに驚かされる。

再び最初から観なおすと、冒頭、水場で主人公たちが水を補給しているシーンがなんとも感慨深い。

さて冒頭、サイレント期の西部劇スターで、本作公開の前年に亡くなったハリー・ケリーに捧ぐとクレジットされる。

ハリー・ケリーは本作のオリジナルである1916年版と1919年版(こちらはフォードが監督)に出演していて、本作では息子のハリー・ケリー・Jr.を準主役で起用しているなど、フォード監督のケリーに対する並々ならぬ尊敬の念が感じられる。

■映画 DATA==========================
監督:ジョン・フォード
脚本:ローレンス・ストーリングス/フランク・S・ニュージェント
製作:ジョン・フォード/メリアン・C・クーパー
音楽:リチャード・ハーゲマン
撮影:ウィントン・C・ホーク
公開:1948年12月1日(米)/1953年5月20日(日)
ほーりー

ほーりー