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グレゴリオ・コルテスの一のレビュー・感想・評価

グレゴリオ・コルテス(1982年製作の映画)
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チカーノ・リヴィジョニスト・ウェスタン。逃走と追跡、犯罪と法という西部劇の定石を踏襲しながら、本作が浮かび上がらせるのは言語の違いによるディス/コミュニケーションである。アメリカ人が理解しえないスペイン語には字幕が出ないし、そして終盤で明かされる事件の発端は些細な“誤訳”なのだ。しかし、それを超えたコミュニケーションの成功が描かれるシーンもある。逃走を続けるエドワード・ジェームズ・オルモスが、牛の番をするひとりの米国人カウボーイと出会う。彼は「ずっとひとりで話し相手が欲しかった」と、通じない言葉でオルモスに語りかけ、食糧を分け与えてやる。オルモスはその礼として自らのナイフを贈与する。短いシーンだが、ここには親密なコミュニケーションが発生していて印象深い。

2/5
ダドリー・マーフィー『ブラック・アンド・タン』(1929)
20分足らずのショートフィルムだけど、これすごく良い。デューク・エリントンとコットン・クラブ・オーケストラが演奏するナイトクラブのダンスショーは、鏡面の床を使った撮影や踊り子の主観ショットとして現れる万華鏡フィルターなどの映像的趣向が施され、踊り子が絶命する悲劇的ラストの室内シーンにおいても、真っ暗な部屋でバンドが音楽を奏でる超現実的な演出がなされている。

サム・ニューフィールド『草原のハーレム』(1937)
オール・ブラック・キャストによるミュージカル西部劇。当時のハリウッド的エンターテイメントに倣った人種映画としては意義深いのだろう。主演のハーブ・ジェフリーズは、他のキャストと比べると肌の色は明るく見えるのだが、より黒く見えるようにメイクをしていたらしい。
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