キャッチ30

渇きのキャッチ30のレビュー・感想・評価

渇き(2009年製作の映画)
3.8
 吸血鬼と対峙する筈の神父が自ら吸血鬼となり、人妻と恋に落ちてしまったらどうなるか。監督のパク・チャヌクはこの題材に挑む。

 信心深いカトリックの神父サンヒョンは病院で重病患者を看取ることしか出来ない自分に無力感を募らせていた。彼はアフリカの研究所で極秘に進められていた致死率100%のウイルスに対するワクチン開発の為の人体実験に志願する。奇跡的に生還したサンヒョンは幼馴染であるガンウの妻テジュと出会う。地味で無愛想だが不思議な色気を漂わせるテジュにサンヒョンは惹かれていく。そんな時、サンヒョンの身体に異変が起こる。正体不明の血液を輸血された彼はバンパイアになってしまう。

 サンヒョンは聖職者としてのモラルと欲望との間で葛藤する。病院に忍び込み、昏睡状態の入院患者の血を輸血チューブから吸い、飢えを凌ぐ。テジュとの快楽にも溺れていく。
 一方、義母と夫に抑圧された生活を送っていたテジュはサンヒョンと出会ったことにより欲望を暴走させていく。サンヒョンを言葉巧みに誘惑し、夫を殺すように仕向け、自分も吸血鬼にしてくれと懇願する。

 パク・チャヌク監督はホラーとラブストーリーとサスペンスを串刺しにし、一緒くたにして撮る。夫にハサミの刃を突き立てる寸前まで振り下ろすテジュもそうだが、サンヒョンとテジュの不貞を見つめる義母の姿に恐怖を感じた。