あきらっち

渇きのあきらっちのネタバレレビュー・内容・結末

渇き(2009年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

パク・チャヌク監督作品。

“オールドボーイ”や“お嬢さん”にハマり本作鑑賞してみることに。
得意の変態エログロ作品には違いなかったが、韓国版“ヴァンパイア”映画だったとは!

主演は普通のおっさんにしか見えないソン・ガンホ演じるサンヒョンとキム・オクビン演じるテジュ。

“ヴァンパイア”映画。
確かに吸血鬼ものには違いないが、私が今までに観たことのあるドラキュラ的な吸血鬼とは全く異なる。

普通、吸血鬼はちょっと寒気がしそうなくらいの美男美女のパターンが殆どだと思うのだが、何せ普通のおっさん。
しかも血を吸う牙も無い。
舐める、飲む、挙句の果には点滴逆流させてチューチュー吸うなんて…
そこだけで既に十分変態。

血が必要なのと、お日様に当たると死ぬのは同じ。
それさえクリアしていれば不死身です!

前半は、吸血鬼への葛藤と、吸血鬼と鳥籠の不憫な人妻とのラブストーリー。
惹かれ合う二人が人目を忍んで求め合う姿はとてもエロチック。

一転、後半はエログロ満載の世界。
籠の中の鳥であったテジュはサンヒョンと出逢い膨らむ欲望を抑え切れず、狂気に取り憑かれたかのように地獄へ突き進む二人。
テジュの夫ガンウやその母との場面の数々は、もはやホラーであり気持ち悪さに戦慄すら覚え、トラウマシーンとなる人も多いのではないだろうか。

それにしてもソン・ガンホを見ていると、まるで國村隼と新井浩文を足して2で割ったかのよう。山田洋次監督は韓国の渥美清と呼んだとか。静かで生真面目なキャラクターは、三枚目であっても、時に哀愁たっぷりに、時に格好良く、物語が進むにつれ観る人を魅了する。

そしてもう一つ。
パク・チャヌク監督作品に共通して言える主演女優の素晴らしさ。
キム・オクビンが素晴らしい。
鳥籠の奴隷のように死んだ目をした表情や、生気を取り戻した艶かしい表情、少女、悪女、狂気の表情…
表情がとても豊かで、喜怒哀楽、演技力が抜群だ。
濡れ場は生々しい色気を放ち、アジアならではの五感に訴える妖艶さが匂い立つ。


もう二人の心は渇いてなどは無い。
夢に見た海岸の朝日。
物悲しく切ないラストシーン。

革靴に愛が宿る。
あきらっち

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