アキラナウェイ

恋のロンドン狂騒曲のアキラナウェイのレビュー・感想・評価

恋のロンドン狂騒曲(2010年製作の映画)
3.5
【ウディ・アレンを観よウディ!】

久し振りのウディ。

いつもクラシカルな雰囲気で幕を開けるウディ・アレン作品が好きだ。今回のアバンタイトル、BGMは「星に願いを」のジャス・アレンジ。

シェイクスピア曰く——

人生は単なる空騒ぎ。
意味など何一つない。

冒頭の言葉通り、いい歳こいた大人達が恋の幻想に絆(ほだ)されて、空騒ぎ。空回り。

40年連れ添った夫アルフィ(アンソニー・ホプキンス)に離婚を切り出された妻ヘレナ(ジェマ・ジョーンズ)は、オカルト占い師にハマり、彼らの娘サリー(ナオミ・ワッツ)は、売れない作家の夫ロイ(ジョシュ・ブローリン)に愛想を尽かし、職場の上司に恋をする—— 。

アンソニー・ホプキンスにナオミ・ワッツにジョシュ・ブローリンにアントニオ・バンデラスときたもんだ。

ウディ・アレンって、ポーカーの名手のよう。

いつも良いカード(キャスト)を手元に揃えている感じ。

軽快なテンポで綴る、ウディ・アレンお得意のシニカル・コメディ。

どうしようもない大人達は互いの伴侶ではなく、おのおの好きなベクトルに恋心を抱いている。

財産目当てのコールガールにゾッコン(死語)のアルフィ。好きな物は何でも買い与え、バイアグラを飲んでハッスルする(死語)アンソニー・ホプキンス。ほんと、どんな役でも演るやん。

フェロモンダダ漏れの上司グレッグ(アントニオ・バンデラス)にメロメロ(死語)のサリー。夫のロイは向かいのアパートの覗き見にご執心で、そこに住むエキゾチックな美女に年甲斐もなくアタック(死語)。

この、ジョシュ・ブローリンがキモいのヨ。

「着替える時はカーテンを閉めないでくれ」

キッモーーーーー。

そんな事を言われても、ロイに惹かれ、婚約破棄してしまうエキゾチック美女は頭がおかしい。

ロイが不自然にシャツをはだけさせて、ジョシュ・ブローリンの胸筋と腹筋を見せびらかせているのは何でだろう?って思っていたら、シャツのボタンを掛け違えているシーンに。

そうか。
全てはボタンの掛け違い。
とことんすれ違うし、
とことんうまくいかない。

何がどうなるってオチでもないけど、冒頭のシェイクスピアの言葉が空しく響く。

人生は単なる空騒ぎ。
意味など何一つない。

ウディ・アレンって、何故にこんなに厭世的な世界観を描くのだろう。それでいて悲観的かと言えばそうでもなく、皮肉めいていて滑稽。

ま、安定のウディ節。
イギリス好きにはおススメ。