モカ

12人の怒れる男 評決の行方のモカのレビュー・感想・評価

12人の怒れる男 評決の行方(1997年製作の映画)
4.0
昔のシドニー・ルメット作に満足してしまい、こちらのウィリアム・フリードキン版には手を付けずにいたが、観てみたら綺麗にオマージュされてる。

個人的には、フリードキンと言えば『恐怖の報酬』のような体を張った映画のイメージが強いのだけれど、こういったアクションよりも言葉で物語をつむぎ出すタイプの作品の扱いもお見事。
しかも主演がジャック・レモン。彼はやはり“無思慮な右ならえ”に異を唱える役がしっくり来るね。

観ていると映画の議論に引き込まれ、当事者のような臨場感を楽しめるのは勿論のこと、ついつい多数側に傾いてしまう人間の群集心理やら、客観的な理性ではなく個人の主観的な感性に基づいて物事を判断してしまう誤ちなどなど、誰もが持ち合わせる人間らしい欠点を陪審員の会話の中で浮き彫りにしていく過程はいつ観ても鮮やか。
自分としては、この作品における心理描写の運びに最大の魅力を感じてしまう。

複数あるリメイク作をまだあれこれと観ちゃいませんが、脚本家レジナルド・ローズの傑作って事だけは間違いない。
「物語は脚本が面白ければ場所など関係ない」という言葉を見事に証明してくれてます。
モカ

モカ