空きっ腹に酒

メゾン ある娼館の記憶の空きっ腹に酒のレビュー・感想・評価

メゾン ある娼館の記憶(2011年製作の映画)
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再鑑賞。

メイクして、華やかに着飾って、男性の望む美しい自分を演じること。楽しそうに笑っているようで、ほんとうは心はここにないこと。抱かれている間、頭もからだもからっぽにして、ただじっと時が過ぎるのを待つこと。彼らが求める言葉や態度を簡単に用意出来ること。その気があるフリをすること。わたし、全部知ってるよ。
消耗されるばかり、毎夜心とからだをすり減らしながら生きていくんだ。笑ってるのは楽しいからじゃない、笑ってないとやってられないから無理をしてでも笑うの。一体いつになったらここから抜け出せるのか、出口は今もこの先も見つかりそうにない。それでも心の灯火を消すまいと、笑いながら泣いてるみたいな顔をする彼女たちの悲しい姿が頭に残る。
(2023.1.10)

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酒と煙と愛欲と性液で満ちたあの館から出ることが出来なくて、美しい彼女たちはみんなどこか悲しそうだった。まるで鳥かごの中にいる鳥たちのように、彼女たちに自由なんてものはない。きらびやかなドレスを身に纏う綺麗な彼女たち、その美しさは悲しさをより一層引き立たせ、あたしは呼吸の仕方を時々忘れそうになる。

自ら望んで入った世界でも、いつしかそこに嫌気が差して、抜け出したいのに抜け出せずに十数年もの間身を置いて、いつからか、ここにあるのは身体だけ、こころと頭はすっかり空っぽだ。好きでもない男に抱かれている間のどこか遠くを見ている瞳と、喘ぎ声なんて出てきやしないこと、いつでも悲しそうな顔をした彼女たちの姿を、あたしは知っていて、だからやっぱり苦しくて仕方がないよ。


「私たちが燃えなきゃ 夜は暗闇よ」。きっと、いつの時代もそうなんだろう。男たちの欲望を満たすために、燃やされるのは彼女たちのこころ、魂だ。やっぱりこれを書きながらもあたしは胸がヒリヒリとしていて、なんだか少し熱を帯びている。性を仕事にするということ、それは身をすり減らし、こころを燃え尽くしてしまう。だから疲れて1000年だって眠っていたくなるほどの夜があるんだろう。

…それでも女は強いんだ。悲しいから笑って、笑って、すり減って、それでも生きていくしかないんだよ。時と場所だけが変わり、変わらない、変われないままの、抜け出せずにいる女がいるんだよ。それでも人生は続いていくから、そうしてそこで、身につけてきたやり方で、生きていくしかないんだよ。眩いほどに、「性」と「生」とがこの作品の中にあった。


職種は違えど、性にまつわる仕事に携わっていたあたしには、チクチクする映画だったなあ。小さなトゲが刺さって、ずっとそれが抜けなくて、チクチク痛むような、そしてどうしたってかなしかったなあ。また観たくても、この胸の痛みを忘れられるまで、観れそうにないや。(2016.07.09)
空きっ腹に酒

空きっ腹に酒