あさひ

メゾン ある娼館の記憶のあさひのレビュー・感想・評価

メゾン ある娼館の記憶(2011年製作の映画)
5.0
大傑作だと思う。
観て1週間経ったが、未だに正直どう言葉にしていいのかわからない。
面白いと言うととても語弊がある気もするが、最後まで見入り続けてしまう抗い難い魅力に満ち溢れている。

ほとんど娼館の中だけで繰り広げられるのは閉鎖的空間で繰り返される女性への性的暴力、病気の感染。抑圧されてきた女性の痛みをひしひしと感じさせる。

そして、衣食住を共にする女性たちの生活、ラストの立ちんぼする女性たちの勇ましい立ち姿、スプリットスクリーンで描かれるセックス、どれも女性の連帯感を強調させるものであり、それが閉鎖的な娼館で描かれることでより強調される。

女性がこれまで歩んできた苦悩の歴史と、それらを収斂させた上でのラストの復讐劇。そして娼館という抑圧からの解放。本当に素晴らしい。

そして、この映画が好きなのは、セックスシーンの描かれ方。娼婦たちはもちろん、娼館に通う男性も決してそこまで楽しんでいるようには見えない。でも、決して不快なもの、下劣なもの、としては描かれていない。この辺りの感覚が凄まじい。
『湖の見知らぬ男』を観た時のような、セックスがポルノグラフから解放されている感覚がある。

この映画を観ると、アデル・エネルが映画界からいなくなってしまったのが、本当に悲しい。
ただフレームにいるだけでここまで観客を魅了する俳優はいないと思う。

最後まで上手く言葉にできなかったが、何度でも観たいし、みんなに観てほしい。
正真正銘の大傑作だと思う。
あさひ

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