何とも不思議な魅力を放つ作品だった。1899年、パリのアポロニドというブルジョワ紳士が通う高級娼館の娼婦たちの日常。まだ娼婦が街角に立って商売をする以前の時代の話。アデル・エネルがお目当てでした。アンニュイで美しかったです⭐︎
盛り上がりもなく淡々としているのに、優美さと毒気が渦巻く退廃的な世界観に引き込まれる。猥褻ではなく芸術的。タイトル通り「記憶」というか「記録」なのだと思った。ガールズムービーと言うと語弊があるけど女子トークやピクニックシーンはあけすけで楽しい。
男によって口を切り裂かれる者、人形の振りをさせられる者、着物を着てゲイシャにさせられる者、クスリに溺れる者、梅毒になる者…娼婦たちの生き様を群像劇として描く。ラストシーンで「記憶」という言葉の意味が深まる。
華やかなドレスの裏側で、洗面台で身体を洗う彼女たちの営みが切ない。後半になるに連れ、時代の変遷により行き場がなくなる彼女たちのを観るのが苦しくなっていく。
彼女たちに連帯感があるのが救いで、ムカつく男への復讐もスカッとした。
ベルトラン・ボネロ監督、お初でした。脚本、音楽、製作を兼任、元の奥様が撮影監督。
雰囲気や世界観から古い作品かと思ったら2011年の作品だった。素晴らしい作り込みだと思う。ボカシは芸術性を損なうなぁ。
✴︎クリームさん、ありがとう✴︎