海猫

東京家族の海猫のレビュー・感想・評価

東京家族(2012年製作の映画)
3.4
小津安二郎監督の「東京物語」の実質的リメイク。「東京物語」は好きな映画だけどなにぶん見たのがだいぶ昔なので、細かい場面はあまり覚えていない。にしてもあらすじがほぼ同じなのはちゃんとわかった。ただし作られた時代に差があるし、この「東京家族」は完全に現代を描いているので画面の世相風俗が違う。また演出が当然ながら山田洋次監督のものなので、筋書きの似た別の映画というように受け止められた。あと「東京物語」の方は老夫婦に対して息子たちが露骨に辛辣だったように思う。この「東京家族」の場合はやむを得ない事情があって、息子たちが老夫婦を世話する時間がとれないようになっており、ソフトな感じがする。もしかしたら東京の忙しなさを批判的に描いていて、終盤の「東京には二度と行かない」という橋爪功の台詞になるのかもしれないが。その他、震災の爪痕を描く場面があったり、橋爪功が現代日本を悲観するようなことを言うのが風刺的である。またこののちに作られた「家族はつらいよ」シリーズと比較すると、配役や人物配置がほぼ同じなのが興味深い。苦い味わいが強い「東京家族」と同じ素材で、徹底的な喜劇を作りたいといった意志が山田監督にあったのかもしれない。私は「家族はつらいよ」シリーズを見てから「東京家族」を鑑賞した。今思うと先に「東京家族」を見て「家族はつらいよ」シリーズで笑い飛ばしてしまいたかったな、という印象。いずれ「東京物語」も再鑑賞しよう。
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