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LOOPER/ルーパーのnetfilmsのレビュー・感想・評価

LOOPER/ルーパー(2012年製作の映画)
3.7
 2044年のカンザス州、草原の湿地帯、懐中時計できっちり時間を測る男ジョー(ジョゼフ・ゴードン=レヴィット)は、「私は待つ」という言葉を残しながら、過去にタイム・トラベルしてくる標的を躊躇なく撃ち殺す。2074年の世界ではタイムマシンが開発されていたが、その使用は法律で固く禁じられていた。しかし、犯罪組織は違法なタイムマシンを利用し殺人を行っている。すべての人間の体内にマイクロマシンが埋め込まれ、殺人が事実上不可能になっている時代。彼らはタイムマシンで標的を30年前に送り、待ち構えている処刑人“ルーパー”に殺害を実行させていた。2044年、ルーパーとして30年後の未来から送られてくる標的の殺害を請け負っていた男ジョー。人口の10%がTKの能力を取得した時代、親友のセス(ポール・ダノ)は標的を取り逃がしジョーに泣きついて来る。雇用主であるエイブ(ジェフ・ダニエルズ)たちの追手が迫り、ジョーは銀塊を隠した地下室に彼を匿うが、銀を得るために親友を売り飛ばす。ある時、そんなジョーの前に標的として現われたのは、なんと30年後の自分だった。一瞬の隙が生まれ、未来の自分に逃げられてしまう現代のジョー。現代のジョーは処刑を完遂すべく、すぐさま未来の自分の追跡を開始する。

 一見してジェームズ・キャメロンの『ターミネーター』の亜流と言えるが、その作劇スタイルは新味に溢れる。現在のジョーと30年後の自分との対峙、心なしかシド(ピアース・ガニォン)の母親として振る舞おうとする母性溢れる女性の名前がサラ(エミリー・ブラント)なのも何とも心憎いが、瀕死の重傷を負ったジョーはサラが女手一つで守る農場に迷い込む。エイブが中国語の習得を進める中、ジョーが夢見たフランスの地、「貨車に飛び乗り、街を逃げるんだ」という謎の報せ、「ラ・ベル・オーロル」の踊り子スージー(パイパー・ペラーボ)との密やかな情事。SFと超能力の曖昧になった世界で、自分自身に追われる羽目になる主人公の焦燥感。始めて対峙するダイナー、手負いのジョーが迷い込む農園の絶妙なロケーション。一貫して孤独なジョーと、母親の残像を追い求めるシドの静かな交流。本筋とは直接関係ないものの、惜しげも無く裸体を晒したパイパー・ペラーボの女優魂、そして太腿を摩るエミリー・ブラントの性欲、ほんの少しの出番に賭けたポール・ダノの魅力など今作は役者陣の頑張りに支えられている。現在と未来、過去が交差するタイムリープものとしては、記憶にまつわる整合性は腑に落ちない点があるものの、切り口は決して悪くない。
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