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クラウド アトラスのtakaoriのレビュー・感想・評価

クラウド アトラス(2012年製作の映画)
4.2
2024年33本目
(再鑑賞)

『マトリックス』のウォシャウスキー姉妹(兄弟)によるSF超大作。評価がさほど伸びていないのは、私の一度目の鑑賞時と同じく、6つの時間の物語の同時進行は複雑すぎて追いきれないからではないかと思う。しかも172分もあるので、なかなか見返す気にもならない。
しかし今回、ストーリーを頭に入れた上で再鑑賞してみると、シークエンス間のつなぎ方が絶妙に上手く、またハリウッド一級のスペクタクルに、東洋的な仏教の輪廻転生思想や日本のマンガ、アニメ的要素も組み合わせた傑作だと再評価した。映画評論家の町山智浩が評価している通り、この手の複線系同時進行ものでは珍しく物語が破綻せず、綺麗にまとめ切っている成功例である。手塚治虫の『火の鳥』や今敏の『千年女優』に多く通じるところのある映画である。
輪廻転生は西洋のキリスト教文化にはあまりない思想だが、性転換したウォシャウスキーにとっては、同じ役者に異人種や異性をあえて演じさせることで「魂には性別も人種も宗教もない」というメッセージを発することが重要だったのであろう。しかし、他の人も指摘している通り、白人に東アジア系を演じさせる際のステレオタイプなつり目のメイクはいただけない。黒人が白人を演じるのはよいが、白人が顔を黒塗りにして黒人を演じるのはNGである。このコードには忠実に従う一方で、アジア人なら差別的とも取れる描き方をしていいのか、というのは大きな不満点ではある。とは言え、その点を考慮してもやはり傑作であるとの評価は揺るがない。
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