夏藤涼太

舟を編むの夏藤涼太のレビュー・感想・評価

舟を編む(2013年製作の映画)
4.2
NHKのドラマ版が良すぎて、評判の高かった映画版を今回初めて見た。

いや〜よかった。
予告がポップすぎて当時はスルーしていたのだけど……予告のノリとは全然違う、というか真逆の映画。これなら高評価も納得。

小津安二郎の系譜というか……"古き良き日本映画"の魅力が詰まりに詰まっている。

物語は淡々としていて、悪く言えば、起伏はない。演出も、感情をあまり表に出さない主人公の演技と相まって、なおさら「抑制された映画」に感じる。
しかし日本人というものは本来、感情を表に出すのは恥だと思われていた民族なわけで。それは今思えば馬鹿らしくもあるが、愛らしくもある。本作にはそんな、既に失われた、愛おしき古き日本がある。

そして感情やセリフを寡黙にする分、自然の風景や虫の音といった「主人公を包み込む世界」で、情緒的に表現するのもまた、アニミズム・自然共生的な日本映画の伝統である。

そうした「古き良き」というテーマは、演出だけでなく、アナログ極まりない紙の辞書を、これまたアナログ極まりない方法で作るという物語(原作)そのものにも宿っており、その原作のテーマを最大限活かすべく、監督は、全編アナログフィルムで撮るというスタイルを選択したのだろう。
そこには、現代人からは失われた、静かで、ゆったりとした、しかし極めて豊かな映像が収められている。

という硬い感想は置いといて。
髪を下ろしたオダギリジョーの西岡……あまりにもエロすぎる。
オダギリジョー、三浦しをんの書くキャラクターを実写化するために生まれてきたのでは?と錯覚する程であった。

今のところNHKのドラマ版は脚本・演出・キャストともに非常に秀逸だと思ってみているが、西岡に関しては、向井理ではなくオダギリジョーに軍配を上げざるを得ない……
夏藤涼太

夏藤涼太