ろく

私の奴隷になりなさいのろくのレビュー・感想・評価

私の奴隷になりなさい(2012年製作の映画)
4.0
「性」について語るのはほんと難しいんだよねえ。だって語っている時点で「自分の性」を語るようなものなのよ。そこは隠したくなってしまうじゃない。

だから「性」を語るときは(当然僕もだけど)オブラートに包む。ある時は殊更に「笑い」を入れて一歩引いて語り、またある時は無駄に客観視して「自分はそうではない」という立ち位置で語るんだ。でもそれってホントにしっかり語っているのかなぁと思ったりして。

その「語ること」の困難さを明確に伝えたのが吉本隆明の「共同幻想論」だと思っている。「共同幻想」は語れるんだよ。皆のコンセンサスがある程度しっかりしている。でも「性」について語ると「対幻想」になってしまう。いわば視点は一人しか(そう、相手しか)存在しないの。そこでは「自分たちだけの世界」があればいいんだよ。

ということでこの映画。僕はすごい面白いと思って見てしまった。でもそれは一方で「僕の性に対する考えはこうなんだ」って言っているみたいできつい。そう、この映画を肯定することはそのまま自己をさらけ出してしまうことでもないかと思い、「否定したくなる」。あー、まずいなぁ、じゃあ批評なんかできないじゃない。

でもね、この映画の「気持ち」は分かるのよ。わかるけど言いたくないの。壇蜜はこれでもかの熱演でもうここまでさらけ出していいのかと思ってしまう。これは壇蜜に全て持って行かれた映画なんじゃないかと見ていて感じた。

もともと壇蜜好きなんだけど(実はエッセイも5冊ほど読んでいる。とんでもなく「才女」だと思う)、それがここまでやる?という感じ。また板尾がいいんだ。いつから板尾=ヘンタイというコンセンサスは仕上がったんだろう。

といろいろ書いたけど、それでもこの映画(さらに本質)について語ることはできない。だって「性」はお互いの「共同幻想」を無視するものだから。自分だけの「大切さ」は他者にとっては意味のないものかもしれない。だからウィトゲンシュタインが喝破したように「わからないものに関しては沈黙せねばならない」。あれ、十分饒舌じゃないかって。それは僕が凡夫だからです。

※今回は通常版でなくディレクターズカット版を視聴。追加されたであろうコンテンツがさらにエロい。壇蜜好きのあなたなら満足いく出来のはずだ(僕はちょっと多すぎて胃酸過多になりそうだったけど)。
ろく

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