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明日のRandBのレビュー・感想・評価

明日(2011年製作の映画)
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今泉力哉監督特集ということで、鑑賞。

2011年、東日本大震災の後、311仙台短篇映画祭に合わせて制作されたオムニバス映画。3分11秒という制約の中で、今泉力哉、入江悠、河瀨直美、塩田明彦、篠原哲雄、瀬田なつき、内藤瑛亮、濱口竜介などなど、名だたる著名監督がメガホンをとった震災の記録。

以下、鑑賞したもののみの感想。

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『Mother Said. I Sing. Wife Listens.』
監督:今泉力哉

Thanks Theaterで鑑賞。

若い女性に歌いかける初老の男性。フォークギターを弾く彼が伝えたかったメッセージとは……。

曲を聞いて、涙する女性。歌い終わった男性が「ずるいよ……。」と発した後にある出来事が起きる短編。

今泉監督作品という観点から観ると、ムーラボ作品『nico』以降で多用される「音楽の演奏」と、311以降で根底にみられる「そこにあったものの不在」という、2つの作家性が最も色濃く出た作品といえる。

短い時間ながらも、描くことの絞りこみ具合が絶妙で、メッセージが明確なのが良い。

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『駄洒落が目に沁みる』
監督:鈴木卓爾

映画歴116年、電気が『デンキムシ』という生物になった時代。偶然、出会った4人に訪れた奇跡。

vimeoで鑑賞。

ネットで監督が公式に配信した作品を観たが、8分の作品だったため、多分、自分が観たものは完全版だと思われる。

『マッドマックス』や『北斗の拳』を彷彿とさせる世紀末描写、駄洒落が横行する世界観、監督ご本人の登場と、基本的には、オフビートな作劇。

しかし、映画歴116年=(1895年+116年)=2011年であり、電気が失われた世界という形で、311以後の東日本の状況を表しているように、メッセージそのものは、かなり誠実。

電気がある→映画を観ることが出来る→過去の記憶を思い出すことができる、という、ある種のしりとりのような構造が見事だった。

協力として、頃安祐良監督、横浜聡子監督の名前も……。

本編最後に表示されるテロップは、完成直前に亡くなった自社映画上映団体"イメージリングス"代表、しまだゆきやすさんに捧げられている模様。

参考

駄洒落が目に沁みる on Vimeo
https://vimeo.com/347552486
(本編はコチラ。)

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『Humming』
監督:瀬田なつき

『5windows』の原型だと思われる。

詳しい説明は、#5windows でレビューを辿っていただけると、読むことが出来ます。

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『廃棄少女』
監督:内藤瑛亮

『先生を流産させる会』の特典ディスクに収録された短編の原型だと思われる。

詳しい説明は、#廃棄少女 でレビューを辿っていただけると、読むことが出来ます。

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『無事なる三匹』
監督:山下敦弘

『MIRRORLIARFILMS-Season1-』のために製作された数年振りの続編に際し、本編上で本作が併映されていたため、鑑賞。

監督の過去作(『どんてん生活』『ばかのハコ船』『リアリズムの宿』など)は鑑賞していたため、作家姓が感じられる作品だったのは確か。

放射能をネタにしたり、あえて、震災後に生きる人々を真面目ではなく、不真面目に描くのは、監督のカラーだなと思ったが、間違いなく、怒る人や嫌悪感を抱く人もいそうだなと思った。

バカな男たちを美化するホモソーシャルな価値観が、良くも悪くも印象的な一作だった。

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参考

仙台短篇映画祭2014 311明日上映
http://www.shortpiece.com/archive/2014/program_311ashita.html

プログラム | ショートピース!仙台短篇映画祭
http://www.shortpiece.com/archive/2011/311_asu.html
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