OASIS

教授とわたし、そして映画のOASISのレビュー・感想・評価

教授とわたし、そして映画(2010年製作の映画)
3.5
ひとりの女性を巡る三角関係のもつれを描く映画。

一人ホン・サンス祭り七本目。
4つの章に分かれているので、それぞれの感想を。

一章:呪文を唱える日
エンタメ映画とは程遠い芸術映画を撮り続ける監督ジングが、尊敬する教授ソンがお金の為に他の人を昇進させたと聞き、お酒の席で不満をぶち撒ける。
その後、映画のトークショーで昔の恋人について質問され・・・。
資金調達に苦しむ現状や「テーマなんて初めから決めて作ってない」と言い切る青さが、若手映画人の置かれている立場の地盤の薄さと未来の無さを物語る。
唐突な質問に困惑するジングの狼狽ぶりが面白かった。

二章:キング・オブ・キス
学生時代に戻り、チョン・ユミ演じる元彼女オッキとジングの出会いが描かれる。
初めは抵抗していたが、ジングの押しの強さに負けて身体を許してしまうが、実はオッキはソン教授とも秘密の関係を持っていて・・・。
ここでホン・サンス作品に共通する構図が表れて、ジングがオッキに対して言う「愛してる」の言葉の軽さや「君は僕の理想の全てを持ってる」と言いながらも「私は何を持ってるの?」と聞かれると何も答えられなくて話をそらすという場面の軽薄さが情けなくも可笑しい。

三章:大雪の後に
誰も居ない教室に佇むソン教授の元にジングとオッキがやってきて気まずい場になるが・・・。
奇妙な三角関係を築いている事を知らないジングが、男女のあれこれについて教授に尋ねるという胃が痛くなる皮肉なやりとりが、観ているこちらまで居心地が悪くさせる。
教授が酒を呑んだ帰りに店先で吐いたタコ?を長めに映し出すラストが意味深で、酸っぱいものが込み上げてくる感じがした。

四章:オッキの映画
ソン教授とジングとの三角関係を経験したオッキが、それを基に映画を作ろうとする。
「年上の男」と「若い男」の行動を対比させて自分の作る映画の肥やしとするが、俳優が演じる事を考えるとどうにもそのダメさ加減や魅力が弱まってしまって良さが伝わらないと。
彼女は二人を弄んでいるわけでもなくなんだかんだで好んでいるし、男達もお互いを恨んだりしているわけでもないので、上手く均衡が取れている関係であるのかなと思いました。

ジングが主人公かと思っていたらオッキがその体験を自分のモノとして語っていたりするが、両方の目線からみるとやはり、男の情けなさとそれを手玉にとる女の強かさを描いたホン・サンスらしさを感じる映画でした。
章毎に流れる威風堂々がかなり印象的。
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