Foufou

次の朝は他人のFoufouのレビュー・感想・評価

次の朝は他人(2011年製作の映画)
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反復と差異ってのを徹底しています。

相変わらず主人公はいわゆるゲス野郎です。非エンタメ系映画監督で齢四十前後、長らく映画は撮れないでいて今は地方の大学で教鞭を取るという体たらく。食っていかなきゃなりません、バカにはできませんね。

ところがホン・サンスの造形する人物はことごとく女にだらしがない。それがゲスのゲスであるゆえん。ていうか、「おまえがいなけりゃダメなんだ」みたいなこと言って泣き落としてみたり、酒場でピアノを弾いて気を惹いてみせたり、それもこれも「いたす」までの手練手管で、目的完遂するやスッキリした顔して「君は僕といっしょにいてはいけない」とか「いい人と巡り合って幸せになってほしい」とか、おいおい、そんな奴もいるけどさ……。露骨すぎて笑ってしまう。そう、ホン・サンスにはいつだって笑いがあるのです。

これ、自分がモデルってわけでもないんだろうな、と。ホン・サンスが韓国の大学で教鞭取るかどうかは知らないけれども、少なくとも彼は多作ですからね。小難しい映画撮って、理解されないとか言って苦悩して、グルーピー(死語か)の女を食い物にする。そんな人間とは思えない。そんな輩が周りにいるんでしょうかね(スゲェーエッジの効いた、わかる人にはわかる特定の人物に対する皮肉だったりして)。まぁ、そんな詮索も余興のうち、雪降るソウルのオシャレなバー「小説」で、夜毎いい歳した男女が酒をかっくらってくっちゃべるって、もはやファンタジーとして私なんかは楽しめてしまう。いいなぁ、と。で、本当のところの男女関係がわからない、というか意味深なのもよろしい。ヒヤヒヤします。

ホン・サンスって、似たような映画ばっか撮ってんだけど、毎度新鮮な楽しみが用意されている。雪の夜のオール明けにタクシーを待つ大人の男女が五人……ああ、泣きますね。郷愁ってやつかも。

反復と差異が生きているのです。
Foufou

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