にょいりん

伴奏者のにょいりんのレビュー・感想・評価

伴奏者(1992年製作の映画)
4.0
ナチス占領下のパリ。
若きピアニスト、ソフィは、世界的オペラ歌手イレーヌの伴奏者になる。イレーヌは美しく、真っすぐで、芯も強く、才能があるのに努力を怠らない、そして思いやりもある、つまり完璧なヒロイン。
そんなイレーヌは年の離れたソフィを親友として、自分の手元に置く。
ソフィは輝くようなイレーヌに必要とされる事に喜びを感じつつも、ステージの上では伴奏者の自分に誰も目もくれず、イレーヌしか観ていない事に嫉妬を覚え始める。そんな中、イレーヌとその夫が戦時下のパリを離れてロンドンに亡命する事になり、ソフィも同行する事になる。亡命先のロンドンにはイレーヌの愛人がいて、その愛人とイレーヌはひそかな恋を紡いでゆく。
そう、この映画のヒロインは主人公のソフィではなく、エレーヌ。
波乱万丈で魅力的なヒロインのエレーヌをソフィは伴奏者として、そのかたわらで傍観するのみ。エレーヌへの嫉妬は愛着と入り混じり、ソフィの中で複雑な感情になって行くが、それもソフィは自分の中で抑えてしまう。
戦時下、亡命、許される愛、というエレーヌのドラマチックな人生のすぐそばにいたのに、ソフィの人生はエレーヌの伴奏者という位置に固定されて安定してしまうけど、それが永遠に続かない事がこの映画の虚しく切ない後味になっているのだと思う。
イレーヌとソフィのステージシーンは息を飲むほど素敵だし、どのシーンもケバケバしくなくゴージャスだった。