【過去に観た映画】2013.2.4
原作に忠実であったが、原作も曖昧なので、個性的な女優陣を揃えている割に、ちょっと淡々とした感じであった。
乾いているというのではないが、エロス独特のじっとり
としたぬめり感というのがあまり感じられなかった。
“艶”という自由奔放な一人の女が危篤状態になり、
最後の夫である“松生”が、艶に関わった男たちに
連絡をとるという設定もおもしろいが、その男たちの物語ではなく、その男そのものではなく、その男と関係のある「女」の物語にしているところがひねっていて、深い。
原作もそれぞれの女を章立てして語るが、映画もオムニバスみたいにしているので、盛りだくさんではあるが、1つ1つの物語がやや薄まっている感じ。
ミステリじゃないので、点と点が線になっていかないのも
ちょっともどかしく助長的かな。
艶の従兄で初めての男である作家。
その妻である女をキョンキョンが演じ、その作家の愛人を荻野目慶子が演じていて、
パーティの席でワインをかけあうというバトルがネットで話題になっていたが、意外にステレオタイプであった。
作家があまり魅力的に見えなかったので、画的にバトルするためだけのシチュエーションっぽかった。
表面的に派手な激しいバトルよりも実は静かな戦いの方が根が深いしね。
そういう面では、珍しく抑えた演技の大竹しのぶが怖かった。
妻子を捨てて艶と駆け落ちした夫(松生)の妻役。
自分を裏切った夫とその原因となった女の写真を夜中に
見つめている。
罵りもせず、ただ黙ってその状況を受けて入れている怖さ。
男にしてみれば逆に自分の不貞を責め立て、罵倒された方が楽なのかもしれない。
でも、艶の病室にかけつけ、横たわる艶の胸元をはだけるシーンはせつなくも怖いシーンであった。
どの女たちにも共感できるところがあり、胸が痛いやら、せつないやらだが、一番シンクロしたのは、やはり松生かもしれない。
10kg減量して、悲壮感漂う松生を演じる阿部寛の
役者力は壮絶で圧倒される。
激しいまでに愛し抜くということは、常に愛と憎悪の
狭間で葛藤し続けていたのだろう。
ぬるい愛では満足できない、アガペーが陥る愛。
常に胸に剣を指し合いながら、血だらけになりながら
でしか愛を確認できない愛。
観終わった後、愛を語りたくなる映画。