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フライトのevergla00のネタバレレビュー・内容・結末

フライト(2012年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

制御不能となった航空機を奇跡的に野原へ着陸させ、被害を最小限に留めた機長Whipだが、入院時に高いアルコール血中濃度と薬物反応が認められてしまう。

事故前にWhipの不良ぶりが描かれるものの、飛行中の卓越した操縦技術と顔色ひとつ変えない並々ならぬ度胸から、極めて腕の良いパイロットだという印象を強く受けます。問題は事後対応でした。

言い訳ばかりで正面から向き合わない。
過密なフライトスケジュールをこなすにも、別れた家族に会いに行くにも、調査の話し合いにも、そして当然公聴会にも、景気付け?に飲まねばやってられない。実は肝が据わっている所か、Whipは酒の力を借りなければ覚悟を決められないほどの臆病者なのです。個人的に正義の味方のイメージが強いDenzel Washingtonが演じているためか、Whipの言動が不可解に映ることがありましたが、後半、自己の課題を直視できないアル中の特徴なのだと分かりました。

最後の問い“So ….. who are you?”には、酒や薬に頼らなくても万全の力を出し切ることに尽力し、正直に本来あるべき姿で生きていく決意を語るのでしょうか。

とある大御所の先生は、アル中というもっぱらの噂でした。手の震えは、切開すべき部位にメスが届くとピタリと止まる方で、よく先輩は「日本酒の点滴を用意しろ」と私の耳に冗談を囁いてきたものでした。オペよりも、その大先生が潰れるまで付き合わされる飲み会が、疲労や睡魔との戦いで苦痛でした。パイロットのアルハラ問題を知った時は同情しました。
本作の離陸時と着陸時の緊迫した機内の様子は手に汗握る展開で、機長が術者なら、副操縦士は助手で、客室乗務員を麻酔科医と看護師に見立てて観ていました。身体を預かるだけでなく、外にいる家族の人生も変えてしまうかもしれない。術者になってからの自分は毎回の手洗いで、心の中で祈っていました。この副操縦士のような信心深さはないけれど、最後の最後は神か、人知を超える何か大きなものに委ねるしかなく、その分岐点で見極められるのは、それまでの誠実な努力、驕りのない心と謙虚さではないかと思っています(が、偉そうにこんなこと周囲には絶対に言えません😛)。

Denzelはこの役のために体重を増やしたそうですが、肥えても渋い格好良さを維持していました。

(結膜充血は赤い液体で再現していました。涙で流れ出ていましたね。)

“….. every morning is special now, I’m grateful for that… wish I could bottle this feeling that I have about how beautiful every last breath of life is.”
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