ルネ・クレール、1952年。
クレール×ジェラール・フィリップ3部作の2作目です。
ちょっとしたサスペンス感もあり面白かった。
シュルレアリスム的な精神性を丁寧に娯楽へ落とし込むクレールの面目躍如といったところ。
皆さん仰る通り、『ミッドナイト・イン・パリ』(2011/ウディ・アレン)の元ネタなのかな。ただしアレンのような内省はしない。
盟友チャップリンのように風刺をコメディの軸にする事もなく、あくまで庶民の日常と人情をコミカルに描く。
クロード(ジェラール・フィリップ)の見る夢は都合の良い表層的なものだけれど、夢なんてそんなものじゃないか。思考を超えた現実の前フリとして、分かりやすくてアイコニック。美女も沢山出て来るし。
生き生きとコメディを演じるジェラール・フィリップも軽やかで微笑ましい。
現実と夢、夢と夢を繋ぐ演出が素晴らしい。逆転するところの心理的な鮮やかさに、一度見直してしまった。フェリーニも絶対見てる(笑)知らないけど。
時代を一気に駆け上る可愛らしいカーチェイス、後ろ向きの走る馬。丁寧な仕事です。
ハリボテとミュージカルも健在で、ジェラールの歌声も聴けます。
幸せな日常への希求を、最適温の開放性と熟練の技でスクリーンに刻む。
夜ごとの美女に救われてもいいじゃないか。内向きな自己規制、自己否定を優しく包み込むその存在が、穏やかな批評性としても感じられてじーんとする。