こたつむり

恐怖ノ黒電話のこたつむりのレビュー・感想・評価

恐怖ノ黒電話(2011年製作の映画)
4.0
♪ テレフォン・ライン つなげておくれ
  この想いを 彼女の胸まで

「え?2011年の作品なのですか?」
と聞き返したくなるほどに、邦題で損をしている作品ですね。確かに主人公からしたら“恐怖ノ黒電話”なのは間違いないですけど。なんで「の」が「ノ」なのかな。誤変換かな。

どちらにしろ、隠れた傑作であるのは間違いなく。ホラーの原点は、救われない気分になる“厭な感覚”であると再認識しました。やはり、世の中は“優しくない”んですよね。

しかも、うっすらとSFチックなのも素敵。
少しだけ不思議な気持ちにさせた後に、時間差で訪れる恐怖。この“間”が良いですね。どうしても「本当?嘘?」と考えちゃいますからね。初動が遅れるのも当然なのです。

そして、襲ってくる存在意義の否定。
考えれば考えるほど、敵が“完全無欠”に見えてきます。果たして主人公は如何にして立ち向かうのか。勿論、希望を抱いてはいけません。いつだって大切なのは“覚悟”です。

ただ、ささやかなカタルシスも用意されています…が、それも哀しみの向こう側に消えることが前提。あくまでも蝋燭を溶かす炎のように、風が吹けば消える宿命なのです。淡い。淡いのう。

そう。主人公の周りにあるのは哀しみの海原。
透明だからこそ、底の底まで光が届かないことが判るのです。それを顕著に表現しているのが《DVを振るう夫》ですね。あー。考えれば考えるほど“やるせなく”なるなあ。

まあ、そんなわけで。
引越しした先にかかってきた一本の電話。
それが主人公の運命を狂わせるのだった…なんてベタベタな導入ですが、B級と侮らずに臨んで戴きたい作品。ホラー寄りのサスペンスが好きな人にオススメです。

ちなみに仕上げたのはマシュー・パークヒル監督。他に手掛けたのが『ドット・ジ・アイ』くらい…ってかなり知名度がマニアックですが、何がサスペンスを盛り上げるのか…熟知されていますね。もっと脚光を浴びてほしいです。
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