【テキサス・ファナティック・マサカー】
「シッチェス映画祭」ファンタスティック・セレクションの1本として、シアターN渋谷で上映された作品ですが行けず、レンタルしました。
これオモロイです。シッチェス・グランプリもわかる気がするな。
殺伐として、泥臭くて、黒くて、銃弾飛び交って、どこか懐かしい。かつての名画座二本立てで、拾い物に出会ったような感覚でした。全体安っぽいんですが、人物が皆安っぽいから、よいバランスです(笑)。
タイトルは、共和党支持者の多い「赤い州」の意味だそうですが、物語の元ネタは、1993年のブランチ・ダビディアン事件でしょうね。
こちらの武装既知外教団は、地道な「殺人布教」がバレて逆ギレ戦争へ。あちらより教団規模がこぢんまりなのは、やっぱ制作規模のせい?このネタでは資金が集まらず本作、自主制作したそうですからね。
ごく軽いトーチャー・ポルノな面(生贄は男だけど)もありますが、基調は濃ブラックコメディで、ひきつり笑いで楽しむのが正しいかと。
アメリカのある側面、という意味ではノンフィクションでしょうが。ゲイや中絶賛成派など、教義に背く者を憎み本気で殺したい連中が、堂々と蠢いてるでしょうから。日本にいるから笑ってられるのかも。
しかし教団の既知外ぶりに、政府が負けないあたりはさすがです。宗教テロめんどくさ、と○○法を盾にした「大掃除」が始まっちゃう。9.11から喉元過ぎて熱さ忘れたのか、あっけらかんと投槍モード。既知外にうんざりするのもわかるからつい、笑っちゃうんですが。
実行部隊となるATFのリーダー、ジョン・グッドマンがすごくいい!既知外と、上層部の無茶ぶりに挟まれうんざりしつつ、やるこたやる。何度か見せる、映画の気分を代弁する口ポカン演技がお見事です。
一方、既知外教祖役マイケル・パークスの胡散臭さがまた良しです。一見、好々爺なのに眼が違う(笑)。何曲も披露する狂団愛唱歌も素敵。便所掃除のBGMにしたら大変はかどりそう。サントラほしいぞ(笑)。
既知外に刃物、の魅力が出ちゃってるところがまた、ヤバイ面白さ。狂信者でも銃を持つとカッコイイ!(笑) ペキンパー映画の人物の如く、滅びの美学を一瞬、体現するムダな輝き。神背負うワイルドバンチか。共感は皆無ですが(笑)。こんな輩は死んだ方が、神も気が楽だろうね。
最後で巨大スケール、と錯覚させるような終末論までカバーしてます。世界の終りをこんなお安く迎えられるなんて、びっくりしました(笑)。ここでのジョン・グッドマンはすごいです!…口ポカンの極みで。
全般、シャレにならぬ話をシャレにするさじ加減が、巧いんですね。こんな切り口からタブーに手を突っ込む映画、もっと出て来ないかな。
<2013.3.21記>