あの娘は、私のすべて。
北海道大学の期間限定映画館「CLARK THEATER 2016」で鑑賞。
企画プログラム「おとぎ話みたいなあの娘たち」
山戸結希監督のゲストトーク付き。
本作は、監督が上智大学3年生の時に映画研究会を自ら立ち上げて撮った処女作。
2013年4月の上映を最後に、監督の意思により都内では上映封印中とのこと。
ただし「家出少女のために、地方上映はときどき!」行われており、今回の上映もそのひとつ。
舞台は熱海。
周囲に適応できない自意識過剰な舞子と、そんな舞子の唯一の理解者にして親友「ホトケの菅原」。
2人の女子高生が紡ぐひと夏の物語。
学生監督の処女作ということで、撮影、録音、編集等が粗いのは仕方ない。機材の問題もあるのだろう。セリフの音量が途中で変わったり、聴き取れないところもしばしば。
出演者の演技もなかなか厳しくて、
男子2人は三味線が弾けるという理由だけで出演オファーを出されたためにまさかの棒読み(笑)
(2人とも現在はサラリーマンとのこと)
それでも、衝動を叩きつけてくるような脚本と、出来はともかくとして、印象的なシーンなどで監督の撮りたいなにかが強烈に伝わってくる。たびたび聴こえてくる富山優子の曲も胸を打つ。
ラストには涙ぐまされる始末。一部の主要登場人物が棒読みの映画でなぜ泣かなければならないのだろう(笑)
舞子と菅原がベタベタと強烈に依存し合う様子は、女子の世界ではよくある光景なのかもしれないが、男性視点から見ると、なんだか見てはいけないものを見てしまったような背徳感をつい覚えてしまう。
人目をひく容姿ということも手伝って、もともと強い自意識がどんどん肥大していき、周囲から完全に浮いてしまっている舞子。自分がここにいることの強烈な違和感。菅原以外はみんな嫌い。菅原は私のすべて。
観てる方も感じる。この娘は、ずっとここ(熱海)には居られないだろう。理由も彼女自身が気づいている。だけど、今の彼女のすべてはここにある。そして舞子は、菅原は…。
すでに女性を中心に熱く支持されている監督さんだけど、男性の私からみても大いに感じるものがあった。男であること、女であることを超越した若い魂の衝動が胸に響いた。
この衝動がさらに進化した姿が「おとぎ話みたい」なのだろう。
次回はそのレビューを書きます。