tetsu

あの娘が海辺で踊ってるのtetsuのレビュー・感想・評価

あの娘が海辺で踊ってる(2012年製作の映画)
3.8
京都大学での特別講演会にて鑑賞。

日本舞踊を習う同級生・菅原に特別な思いを寄せるアイドル志望の少女・舞子。
彼女たちの前に現れた三味線部の古野と親友・笹谷の存在が、二人の日常を少しずつ変えていく...。

山戸結希監督が「上智大学映画研究会」に所属していた頃、完成させた処女作。

僕自身も大学の映画研究部で自主映画を製作*しているので、「山戸監督のスタートも僕らと同じだったんだなぁ~」という事実に、勇気をもらうと同時に心を揺さぶられました...。
*ちなみに、観客の方々からは「映画ではなく、ただのコント」というありがたいコメントをいただきました。笑

大学2年の終わり、英語の授業で意気投合した女の子と研究会に入ったという監督。
結果として「勉強が忙しい」という理由で彼女に取り残されてしまった監督は、後輩が20人入ってきてしまった3年の春に一念発起し、本作を作ったのだとか。
しかし、一晩で脚本を書き、五日間で撮影したのだと言うから驚き!
当時の並々ならぬ情熱が、今の監督の原点だと思うと、とても感慨深い。

今回の講演会の中では様々な質問やトークの中で、「山戸監督作品にはカラオケが印象的に登場する」ということや、「演技慣れしていない女性であっても"音楽"という歴史性を付与することで魅力的に描いている」という監督の発言など、様々な発見があったが、
特に印象に残ったのは、監督が考える映画での「時間」と「場所」の使い方!

「時間」に関しては、
「映画とMVの違い」を問われた監督が「映画は永遠を写すことが多く、逆にMVは瞬間を写すことができる」と答えた言葉が印象に残る。
「だからこそ、あえて映画で瞬間を描き、MVで永遠を描こうと挑戦している」そう語る監督は、例として過去作品『コスモス』のMVを挙げたが、そう言われれば、監督の作品内で、たびたび使われる「連続する写真」の演出は、映画で「瞬間」を描こうとする試みなのかもしれないとも思った。

「場所」に関しては、
監督の「どの場所で生きるかは、その人物がどの運命で生きるかでもある」という言葉が印象的であった。
監督の最新作『ホットギミック ガールミーツボーイ』では、三人の男性との関係性の中で「自分の居場所」を探すヒロインの姿や、彼女が住む特徴的なマンションという「場所」が特徴的だったが、それがその言葉を表しているのではないか。
ところで、場所にこだわる監督は撮影の際にも、その日のロケ地の様子でシーンの撮り方を変えることがあるらしく、『ホットギミック...』の長回しシーンは、その日、突然、決めたと言う。
(現場は騒然としていたとか。笑)

というわけで、
映画の感想というより、講演会のメモみたいになってしまったのが本当に恐縮ですがw、観る機会に恵まれない貴重な作品ですので、ファンの方はチャンスがあれば逃さずに観てもらいたいです!

参考
おとぎ話 "COSMOS" (Official Music Video)
https://youtu.be/binndMiHcyg
(とんでもないMV。顔のクローズアップからの意外な展開は監督の短編『Girls of cinema』に繋がっているとも...。)
tetsu

tetsu