山戸監督の処女作は技術的な粗さは目立つけど、ほとばしる才気と初期衝動の熱量で帳消しに。
キャラの作り込みや配置と距離感はこれ以外には考えられない絶妙感。熱海というロケーションもハマりすぎてるし、そこに住む若者たちの地元や東京への思い入れの違いも超リアル。
そして何よりも言葉のヤバさは天才の所業としか言いようがない。この言語感覚はどこから来るのか。相当の危険球をほいほい投げ込んでくるんだ。これは『おとぎ話みたい』でさらに強化され、あるクラスタの人間たちの心に癒えない傷を与えることになる。
才能と行動力さえあれば、機材や技術がなくてもこんな凄いものが作れるって事だよね。ビデオカメラ1台と大学でかき集めたスタッフとキャストだけで作ったそうだし。
監督自身、本作がこれほど観られる事になるとは思ってなかったはず。だからここまで奔放な作品になったのも事実だと思うけど、それがフロックではなかった事はその後の作品を観れば明らか。
天才誕生の狼煙的作品です。